斎藤「旦那様、お取り込み中すみません。紬様のご両親方からこのようなお話が…」カクカク

紬父「ふむ…」シカジカ

紬父「紬。」

紬「はい。」

紬父「お前のご両親方から頼まれた話がある。」

紬「お父さんお母さんの、頼み…ですか?(さっきの話かしら?)」

紬父「私たちの家、琴吹家に戻らないか?」

紬「え…?(やっぱり…!)」

斎藤「あなた様のご両親方は、あなたに本来の家庭で育ってほしいとのことです。」

紬父「そうなれば、高校は今までどおりに通えるが、大学はアメリカに留学することになる。」

紬「留学…?」

紬父「琴吹家の教育方針だからな。将来の琴吹家の後継ぎにふさわしい教育を受けてもらわねばならん。」

紬「私は、『琴吹紬』になるの…?」

紬母「もちろん、強制はしないわ。」

紬父「お前の人生だ。じっくり考えて決めるといい…」

紬「お断りします。」

紬父「紬?」


紬「私は本来、『琴吹紬』として生きるべきなのかもしれません。」

紬「でも、私はこれまで通り『中野紬』として生きていきます…いえ、『中野紬』として生きたいんです!」

紬母「…」

紬「例え、その結果として産みの親と育ての親の両方を裏切ることになったとしても。」

斎藤「紬様…」

紬「私は、『放課後ティータイム』の一員で、あの子…梓の」

紬「『お姉ちゃん』ですから」

紬父「そうか…」

紬「愚かな娘の、最初で最後の我儘をお許しください。」

紬は心の中のありったけの思いを、自らの実の両親に伝えた。

紬父「…そう言うと思っていたよ。」

紬「え?」

紬父「私たちは一目お前の顔を見れただけ、それで満足だ。第一私たちはお前の人生に干渉する権利なんて持っていない。」

紬母「だからあなたは私たちの事なんて気にしないで、これまでどおりに自由に生きていってちょうだい。」

紬「でも、それじゃあ後継ぎの方は…?」

紬父「養子のものにでも継がせればよい。実を言うと、お前にはあの穢れた世界に入って欲しくなかったんだ。」

紬「お父さん、お母さん…!」

ガチャ

斎藤「何ですか!?」

律「ムギ!!」

澪「何があったかは知らないけど、私たちはずっとお前の友達だ!」

使用人「ちょっと、君たち!大人しくしてって…」オロオロ

紬「みんな…?」

唯「ムギちゃん…お金の事なら私たちに任せてよ!ギ―太の件で恩返しをしたいし!」キッパリ

梓「だから、ムギお姉ちゃんを返して!!」

紬父「おおう…」

紬母「うふふ、素敵なお友達ね。」

紬「…///」カァーッ



紬、事情を説明

唯「すいませんでした!」ペコリ

澪「お騒がせして申し訳ありませんでした!ほら、律も…」

律「私たち、てっきりムギが借金のカタに誘拐されたとばかり…」ショボン

紬「みんな、心配してくれてありがとう。梓!だめじゃない、ちゃんと説明しなきゃ。」

梓「だって…お姉ちゃんがもう帰ってこなくなるかもしれないって思って…」グスッ

紬「はいはい、もう泣かないの。梓もみんなに謝らないとだめでしょ?」ギュッ

梓「うん…みなさん、迷惑をかけてどうもすいませんでした…」ペコ

紬母「紬、私たちからも最初で最後のお願い、いいかしら?」

紬「はい?」

紬母「お友達や梓ちゃんとこれからも仲良くしてね。」

紬「はい!」

紬父「こんなに素晴らしい友達と姉思いの妹がいて、本当に幸せそうだな…私は今とても嬉しいぞー!!」ブワッ

紬「お、お父さん!?」

斎藤「ほっほっほ、子供の幸せを願わない親がこの世のどこにいましょうか。」

紬父「我々がもし日本に立ち寄った際にはまた遊びに来てくれ。もちろん、お友達も連れてな。」

紬「わかりました!」



さわ子「遅いわねぇ…」

さわ子「(あ、よく見たらこの人私のタイプかも。)」チラッ

守衛「…どうかしましたか?」



後日、琴吹家別荘

梓「スゴイ!ほんとにこれ全部食べていいの!?」

紬「もちろん♪おかわりも自由だからね。」

澪「高級料理ばかりのバイキング…なんかすごく申し訳ない気分だ。」

唯「りっちゃん隊員!あれもこれもおいしそうですな!」ワクワク

律「おう!当然全部いただくまでよ!」ビシッ

さわ子「実は私たち、付き合うことにしたの♪」

守衛「どうも…」ペコリ

和「憂…話の流れがさっぱり理解できないんだけど。」

憂「私も…」

純「梓に誘われてついてきてしまったが…庶民の私が口にするのもおこがましい料理の数々…」ガクブル

梓母「…あなた方には大変申し訳ないことをしました…」

梓父「人様の子供を勝手に育てて…」

紬父「とんでもない!むしろ、私達が礼をしたいくらいですよ!」

紬母「紬が行方不明になった時には、『あの子はもう助からない』と思っていました。でもあの子は無事で、しかもこんなに立派に育っているじゃないですか!」

梓父「はい…でも、紬を助けたのは私たちではありません。私たちではなくマフィアからあの子を守って死んだあの人に感謝するべきです。」

梓母「結局身元不明ということでそのままあの子を預かって…」

紬母「過ぎた事は仕方がありません。それにあなたたちも紬の命の恩人じゃないですか。」

紬父「そうだな。私たちも今度、わが娘の命の恩人の墓参りに行くとしよう。」

紬母「これからもあの子をよろしくお願いしますね。」

梓父「はい、わかりました。」

紬父「さあ、堅苦しい話はここまで!今日は同じ娘の親同士、飲み明かそうじゃありませんか!おい、斎藤!あれを持ってきてくれ。」

斎藤「はっ、了解しました。」

梓母「それでは、お言葉に甘えさせていただきます。」

紬母「あの人はこう見えても大酒飲みですから、気を付けてくださいね…」

梓父「はい…?」





こうして彼女はこれからも「中野紬」として生きていくことを決めた。
産みの親と育ての親の両方に、大切な友達、そして最愛の妹に応援されて。
この先にどんな困難が待ち受けているかは分からない。
だがしかし、彼女なら何があってもきっと乗り越えていけるだろう。
知り合った人々の思いを「紬」ぎながら。

おしまい!



おまけ!

三年ニ組

三花「ね~ね~、ムギちゃんってたしか妹いたよね?」

紬「うん、あんまり可愛くないけど。」

慶子「またまた~!素直じゃないな~!」

春子「あたし、一人っ子だからほんとにうらやましいよ。」

姫子「梓ちゃん…だっけ?」

唯「うん、あずにゃん!すっごく可愛いんだよ!」

いちご「唯に気に入られてるのね…」ハァ



二年一組

純「いいな~梓も憂もお姉ちゃんがいて、うらやましいな~」

梓「別にうらやましくないよ、すんごく厚かましいし…」

憂「でもほんとは紬さんの事、すっごく大切な存在って思ってるでしょ?」

梓「うん…」

純「素直じゃないな~」ウリウリ

梓「こら~撫でるな~!」

憂「ところで、その風呂敷は?」

梓「ああ、これ?お姉ちゃんが最近お菓子を作ってくれるから、それを見習って私も作ってみたの。」

憂「紬さんのお菓子、美味しいもんね。」

梓「ちょっとだけなら食べてみてもいいよ。」

純「過度な期待はしないでいただきます。」

梓「失礼な!ちゃんとお姉ちゃんに味見してもらったんだから!」

純「お姉ちゃんは今生きてるよね…?」

梓「…殴るよ?」


放課後

ガチャ

梓「こんにちは~」

梓「…あれ、誰もいない。」

梓「と思ったら何か出ている…」

紬「」zzz

梓「お姉ちゃん…風邪引くよ…?」

紬「ん…梓、おはよう。今何時?」ムニャムニャ

梓「おはようじゃないでしょ。三時半だよ?」

紬「ここ、西日が差しこんで気持ちいいのよね…知らないうちに寝ちゃってた。」

梓「で、なんでそんな所にいたの?」

紬「それはね…誰かが来たら驚かせようと思ってたの!」キリッ

梓「寝てどうすんの…」

紬「わーっ!おーっ!」

梓「もう遅いって…」

紬「そう言えば、私は弾いたことないけどギターってやっぱり難しいんでしょ?お父さんも最初は悪戦苦闘してたし…」

梓「まぁね。ちょっと弾いてみる?」

紬「いいの?」

梓「でも壊さないでね?」

紬「わかってるって。」

梓「ストラップを首にかけて…なんか似合ってる?」

紬「そう?えへへ…///」

紬「なんか満足…はい、ありがと。」

梓「弾かないの…?」

梓「Fのコードは人差し指で全部の弦を押さえて…」

紬「…」ペロン、ペコペコン

梓「必死だなぁ…なんか可愛いかも。」

紬「可愛い?」

梓「あ、なんでもないなんでもない!」

紬「指が痛い…」

梓「大丈夫!?」

紬「ありがとう。やっぱり難しいのね。お父さん、お母さんの苦労がわかった気がするわ。」

梓「私の苦労は?」

紬「あっ、もちろん梓もスゴイわよ!」

紬「いつもいつも指の痛みに耐えて演奏してるんだもの。」

梓「ちょっと違う気が…」

紬「はい、お茶とお菓子。」

梓「ありがと。私の作ったお菓子はみんな来た時に渡すね。」

紬「うん、楽しみね。」

梓「お姉ちゃん、つまみ食いした?」

紬「な、なんでわかるの!?」

梓「ほっぺにクリームついてるじゃん…ほんと、昔っから変わんないよね…子どもの頃はしょっちゅうお母さんに怒られておやつ抜きにされてたし…」ハァ

紬「ムッ…そういう梓だって小学校五年生ぐらいまでおねしょしてたじゃない!」

梓「それは関係ないでしょ!?…はっ!?」

唯・律・澪「…」ジーッ

梓「そこ!何コソコソしてるんですかーっ!!」ガラッ

唯・律・澪「わーっ!!」

ドサドサッ

梓「全くもう…」

律「いや、姉妹の仲むつまじい触れ合いを観賞しようと。」

唯「それよりあずにゃん、小学校五年生ぐらいまでおねしょしてたってほんと?」

梓「わーっ、わーっ!!?」

唯「別にバカにしたりしないよ?」

梓「もうその話はナシ!練習ですよ!」

紬「お菓子は?」

梓「そんなのあとあと!お姉ちゃんも始めるよ!」

澪「やれやれ…それじゃあ始めるか。」

律「よし、1,2,3,4!」チッチッチッチッ




今度こそおしまい!