―駅前―
澪「おぉ、唯」

唯「おはよう~」

澪「おはよう」

唯「こんな朝早くから荷物持ってどこか行くの?」

澪「……実はパパの仕事でアラスカに」

唯「……はいはい」

澪「冷たいなぁ」

唯「ふふっ。で、本当はどこに?」

澪「新曲を考えに海に」

唯「あー前にも行ったって言ってたよね」

澪「うん」




澪「唯の方は?」

唯「んー? 私は暇だからちょっとぶらぶらしようかなと思って」

澪「そっか。じゃあ私切符買ってくるから。……ん?」

唯「」キラキラ ジー

澪「い、一緒に来るか?」

唯「うんっ」


―電車―
澪「でもいいの唯? 乗ってから言うのもなんだけど多分つまんないと思うよ」

唯「大丈夫だよ。冬の海ってなんか大人な感じだし! 私も歌詞考えてみたいし!」

澪「そう? ならいいけど」

唯「それに」

澪「?」

唯「澪ちゃんと一緒なら楽しいよ」

澪「えっ///」ドキッ

澪「あっ、ひ、一人で居るよりはって意味だよな」アセアセ

唯「んー?」

唯「ねぇねぇ、澪ちゃん、その鞄の中何入ってるの?」

澪「あ、これ? 大したものは入ってないよ。筆箱と、ノートと」

唯「えっ、ノートって歌詞ノート?」

澪「そうだよ」

唯「新しい歌詞とか書いてあるの?」

澪「え、う、うん。まぁ少しは」

唯「えー凄い! 見せて見せてー」

澪「だ、だめっ/// もっと推敲してからじゃないと恥ずかしいよ///」

唯「えー。つれないなぁ。じゃあ完成したら一番に見せてね!」

澪「何で一番なんだよ。皆に一緒に見せるよ」

唯「だって早く澪ちゃんの歌詞見たいんだもん。私、澪ちゃんの書く歌詞大好きだよっ」ニコッ

澪「え? あ、ありがと。じゃあ真っ先に見せるよ。約束する」

唯「えへへ」

唯「入ってるのそれだけ?」

澪「あとは財布と……あ、お菓子も入ってるよ」

唯「食べたい!」

澪「ふふ。はいはい、今出すよ」ガサゴソ

唯「えへへ、何か思い出すねー」

澪「何を?」

唯「修学旅行」

澪「ああ、頭ぶつけちゃったやつか」

唯「それもだけど、澪ちゃんもお菓子落っことしちゃって」

澪「ああ、そうだったな」

唯「澪ちゃんも子どもっぽいとこあるんだなーって」

澪「なっ」

唯「澪ちゃんって大人びてるからああいう面もあったのって意外だったんだ。甘えたかったら甘えてもいいんだよ」ギュー

澪「かっ、からかうな///」グググ


―駅―
唯「着いたー!」

澪「ちょっと歩くけど大丈夫?」

唯「大丈夫だよ」

澪「じゃあ行こっか」


―外―
唯「おおっ、さ、寒いねー」

澪「歩いてれば暖まるよ」

唯「じゃあ暖まるまでっ」ギュー

澪「なっ、何するんだよ///」

唯「これなら暖かいでしょ?」

澪「もう//」


唯「澪ちゃんってよく海に行ったりするの?」

澪「うん、まぁ結構。詞のアイデアが浮かばない時は気分転換も兼ねて。他にもいろんな場所に行くけどね」

唯「へー、熱心だねー。やっぱり詞書くの大好きなの?」

澪「うん。元々律に強引に誘われなかったら文芸部に入るつもりだったし。
  ……でも今は、軽音部のためっていうのが大きいかな」

唯「軽音部のため?」

澪「うん。唯はリードギターやボーカルとして頑張ってくれてるし、律は軽音部の部長だしムードメーカーでいっつも皆を笑わせてくれる。
  ムギは美味しいお茶とお菓子を提供してくれたり作曲してくれるし、軽音部のことを凄く大切に思ってて、いつも皆を和ませてくれる。
  梓は可愛い後輩で、唯にギターを教えたり、私達が卒業した後の軽音部のためにいろいろ頑張ってくれてる。
  だから私は、歌詞を書いて軽音部のためになることをしようって思ってさ」

唯「おー、澪ちゃんは難しいこと考えてるんだねー」

澪「そ、そうかな?」

唯「でも私は、別に歌詞を書かないからって澪ちゃんが軽音部のためになることをしてないとは思わないよ。
  澪ちゃんのベースがなきゃ放課後ティータイムはなりたたないんだし、それに……上手く言えないけど、澪ちゃんが軽音部に居るってことが重要なんだよ!」

澪「ふふふ、ありがと。でも、私が好きでやってることだからさ」

唯「うん、分かってるよ、言っておきたかっただけ」


―海―
唯「おー、凄い! 綺麗!」

澪「こういう物寂しげな雰囲気がいいよな」

唯「夏の海しか見たことなかったから何か新鮮だね」

澪「私は何回か来てるからあんまり新鮮さはないけどな。
  あっちに自販機があるから何か暖かいの買いに行こ」

唯「あ、そうだね。止まったら何か寒くなって来ちゃった。えいっ!」ギュー

澪「あ、またっ///」

唯「えへへ。冬の海で抱き合ってるなんてなんだか、恋人同士みたいだねっ!」

澪「えっ//// あ、も、もう/// いいから早く行くぞ」スタスタ

唯「あー、ちょっともっとゆっくり歩いてよ澪ちゃーん」

澪「うるさいっ///」ドキドキ

唯「おー、暖かい」ピター

澪「ほっぺに押し付けるなよ」

唯「これ暖かいんだよー」

澪「まったく」

唯「でもすぐ温くなっちゃうなぁ。やっぱり澪ちゃんの方が暖かくていいや」チラッ

澪「なっ、そんなこと言ったって、抱きつかせないぞ///」

唯「ちぇー、残念」シュン

澪「それより、歌詞書きに来たんだから海の方に戻ろうよ。ほら、紙とペン貸してあげるから、唯も考えたら」

唯「そうだねっ。へへ、もしかしたらまた私の才能が開花しちゃうかも!」

澪「ふふふ、今度は負けないぞ」

澪「……」カキカキ

澪「……」ケシケシ

澪「……」カキカキ

澪「……」ケシケシ

唯「……」

唯「……」カキカキ

唯「うーん」

唯「むむむ」


――30分後
唯「駄目だー! 思いつかないよー! 澪ちゃんは書けた?」スッ

澪「の、覗くなっ/// って言っても、私も全然書けてない。書いては消しての繰り返しで」

唯「やっぱり歌詞書くのって難しいねー。あんなにいっぱい書ける澪ちゃんは凄いよ」

澪「ありがと。でも今日は駄目だな。筆は進むんだけど、気持ちがまとまらないって言うか」

唯「どういうこと?」

澪「う、ううん何でもない/// そろそろ体も冷えてきちゃったし、ちょっと街の方行ってみる? お昼ご飯にはまだちょっと早いけど」

唯「やったー澪ちゃんとお出かけだー! それじゃお約束」ギュー

澪「も、もう/// それはやめろって」


澪「どうしよっか。唯お腹空いてる?」

唯「うん。歩いたらお腹減って来ちゃった」

澪「それじゃお昼ご飯食べちゃおっか。ちょっと早いけど空いてていいだろうし」

唯「そうだね。お勧めのお店とかあるの?」

澪「ていうか結構田舎だからそんなに店一杯ないんだ。いつも行ってる店ならあるけど」

唯「おお、澪ちゃんの行き着けかー。楽しみー」

澪「あ、あんまり期待しないで」


澪「ここだよ」

唯「おおー! いい雰囲気のレストラン」

澪「無理に褒めなくていいよ」

唯「ええー、お世辞じゃないよー」

澪「ありがと。じゃあ入ろっか」



唯「私ミートソースドリアッ! それとねそれとね」

澪「私は唯と同じのにしよっかな」

唯「えー、違うの頼もーよー。そしたら二人のメニュー食べあえるのに」

澪「なっ//// ゆ、唯と同じのにするっ////」

唯「もー、澪ちゃんのいけずー」


唯「ふー美味しかったー。さーてとデザートは」

澪「デザートも食べるのか?」

唯「うん。甘いものは別腹だよ。あっいちごパフェにしよっかな~。いっちっごパ、フェが~♪」

澪「う、歌うな」

唯「えへへ、澪ちゃんは?」

澪「私はデザートはいいや。太るし」

唯「えー、澪ちゃん全然太ってないのに」

澪「でも最近体重が……」

唯「むー。あっじゃあ私のパフェちょっとあげるよ! それなら大丈夫でしょ!」

澪「えっ、い、いいよ//」


店員「お待たせしました」

唯「おー凄い! 美味しそー!」

澪「う……」ゴクリ

唯「へへへ。美味しいー。ほら、澪ちゃんも食べなよ。はい、あーん」

澪「え? い、いやっ、私はいいって///」

唯「食べたそうな顔してるよ~。ほらほら~」

澪「……あ、あーん///」パクッ

唯「どう?」

澪「お、美味しい////」モグモグ

唯「えへへ。何かこれって恋人同士みたいだね。あっこれってさっきも言ったっけ」

澪「なっ。もう、唯の馬鹿っ///」

唯「?」



店員「ありがとうございましたー」

唯「ふー、満足満足」

澪「お腹一杯になったな。って、唯、口にパフェのクリーム付いてる」

唯「えー、嘘っ! 澪ちゃーん、拭いてー」

澪「もう、しょうがないな」フキフキ

唯「んー」

澪「さてと、これからどうする?」

唯「澪ちゃんがよく行ってる場所とかないの?」

澪「うーん、いつもは歌詞考えてご飯食べたらまた海に戻るんだけど、そうだっ、前律が無理矢理ついて来た時にゲームセンターに行ったっけ」

唯「もー」

澪「ん?」

唯「律っちゃんの話はしないのっ!」

澪「え? それってどういう///」

唯「まぁいいや、じゃあそのゲームセンター行ってみようよ」ダッ

澪「えっ、おい唯っ。ていうか唯は場所分かんないだろ!」ダッ


澪「ここだ」

唯「おー、なんか歴史が感じられるねー」

澪「まぁ田舎のゲームセンターなんてこんなものだろ」

唯「そうだねー」


唯「おー、クレーンゲームがいっぱい!」

澪「何かやりたいのある?」

唯「んー、あっ、澪ちゃん! お菓子のクレーンゲームもあるよっ」

澪「そういうのは普通に買った方が安いよ」

唯「もー、クレーンゲームでそれを言ったらおしまいだよー。ロマンがないなぁ」

澪「あはは、それもそうだな。じゃあやってみる?」

唯「ううん、いいや」

澪「どっちなんだよ」

唯「あっ! 澪ちゃん見てみて! あのぬいぐるみ可愛い!」

澪「あっ本当だ。やってみたら?」

唯「よーしじゃあやってみよっと」



ウィーン ポタッ

唯「あー、駄目だー。もう五百円玉二枚も持ってかれちゃったー」

澪「……ちょっと唯貸してみて?」

唯「えっ、うん。はい」

ウィーン 

唯「おおおー」

ポトッ ゴトンッ

唯「おおおー澪ちゃんすごーい」

澪「へへ。何かできそうだったんだ」

唯「凄いっ。澪ちゃんプロだねっ!」

澪「そんなんじゃないよ。それよりこれ、はい」

唯「え? そ、そんな悪いよ。澪ちゃんだって可愛いって言ってたじゃん」

澪「そうだけど、唯に貰って欲しいんだよ。遠慮しないで」

唯「え、じゃ、じゃあ……。ありがとう澪ちゃん! 宝物にするねっ!」ギュー

澪「そっそこまではいいよ」

唯「ううん絶対大事にするよっ! そうだ、私も澪ちゃんのために何か取ってあげる! 何がいい?」

澪「え? う、うーん……」


――

唯「うーん、楽しかったねー」

澪「ああ、もうこんな時間だし、そろそろ帰ろっか」

唯「そうだねー。澪ちゃん、このぬいぐるみありがとう!」

澪「どういたしまして。唯だってこれ取ってくれたじゃないか。ありがと」

唯「えへへ。大事にしてねー」

澪「うん。絶対大事にする」ギュー

唯「じゃ、駅行こっか」

澪「そうだな」



―駅―
澪「切符買って来たぞ」

唯「ありがとー」

澪「今日はありがと、唯。おかげで楽しかった」

唯「ううん、私が勝手に着いて来ただけだし。でも結局歌詞書けなかったね」

澪「まぁ歌詞書くのはまた今度にするよ」

唯「澪ちゃん私、歌詞って自分の伝えたい思いを言葉にしていくものだと思うんだ。U&Iを書いたときに感じたんだけど。
  だからあんまり、無理して書こうとしない方がいいと思うよ」

澪「うん。私もそう思ってるよ。海に来るのとかは、雰囲気造りのためだから」

唯「そっか。ならいいんだ。歌詞作り頑張ってね。楽しみにしてるから!」

澪「うん、ありがと」

唯「あれ?」

澪「?」

唯「でも、てことは、あんなふわふわな歌詞が書けるってことは、もしかして今澪ちゃん、恋してるっ!?」

澪「えっ/// な、なんだよいきなりっ!」

唯「えー、だってそうじゃなきゃあんな可愛い歌詞かけないよー」

澪「い、言っただろ/// 今は軽音が恋人みたいなもんだって」

唯「えー、ほんとかなー」ジー

澪「うっ///」

唯「」ジー

澪「……ま、まぁ、恋、してる、かもな///」

唯「!」


唯「やっぱり! ねぇ相手はだれだれっ? どんな人っ?」

澪「い、言えるわけないだろっ///」

唯「えー、私だけにでいいから教えてよー」

澪「い、今は、教えられない!」

唯「え?」

澪「今は教えられないけど……いつか、いつか絶対に、教えるから」

澪「それまで、待ってて///」

唯「え? 澪ちゃん、それってどういう」

「1番線に、電車が参ります」

澪「あっ、これ、私達の乗る電車だ! ほ、ほら唯、急がないと乗り遅れるよっ///」ダッ

唯「あ、ちょ、ちょっと待ってよ澪ちゃーん」


おわり