「練習用ページ」(2009/10/24 (土) 19:46:40) の最新版変更点
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*オープニング ~meteor ☆ shower~
人間の知覚の範囲を超えて無限大に広がり、尚も止まることなく広がり続けている遥かな大宇宙。
その宇宙の地平線の彼方、限りなく希薄な漆黒の真空の其処より飛来してくる一つの小惑星が存在した。
遠ざかり続ける宇宙の流れを限りなく光速に近い速度で遡り続け、それは数百億年の時を経て遂には到達する。
小さな小さな、赤子の拳にも満たない大きさの、宇宙から見ればただの塵としか言えない小惑星。
無限に近しい孤独な旅を続けてきたそれは恒星に照らされてその身を光り輝き尾を引く彗星へと変化させ、
そしてある惑星の重力に引かれ、あるいは惹かれ――大気との衝突で自らをプラズマへと変貌させると
悠久の旅路の最後の一秒を終えた。
宇宙の塵が燃え尽きただけにすぎない何も珍しくもないはずのこの現象には非常に稀有な特徴があった。
空間と時間――時空を越え、大宇宙に無限に重なる幾多の並行世界。
外なる宇宙とも、別次元とも呼ばれる認識により生まれ、意味の数だけ存在する概念の世界達。
これらの世界のどこにもその小惑星は存在し、そしてある世界の認識よりそれは同時に流星と消えた。
故に、それは単独の流星でありながらある視点からは”多次元流星群”と認識される。
この現象に未だ意味は存在しない。意味はこれから生まれて行き、そしてそれは新たな世界を作るだろう。
- LUCKY STAR ☆ BATTLE ROYAL -
Multidimension meteor shower
”――世界から諍いや争いごとが消え去り、平和が訪れすように”
窓の外。
四角く切り取られた夜空の中を駆け落ちた一つの流れ星に高良みゆきはそんな普遍的で善良な望みを願った。
心の底から、それが真実になればいいと……しかし、でも。
「――やはり、星が消える前に願い事を3回繰り返すというのは無理ですね」
解っていたことだと、みゆきは流れ星の消えた蒼い空を見つめ苦笑する。
元よりそれはただの願掛けでおまじないや迷信の類でしかないことは知っている。故に本気で残念というわけでもない。
そもそも1秒にも満たない内に早口も苦手な自分が願い事を3回も繰り返せるとも思ってはいなかった。
ただ、それでもどこかで信じていたかもしれないこと、その自身の中にある幼さがなんともむずかゆく微笑ましかった。
「さて、今日はもう遅いですし早く寝ませんと……」
一人ごちるとみゆきはカーテンを引いて夜空を閉じ、薄い色のふんわりとした髪を翻しベッドの傍へと移った。
パジャマに着替え、サイドボードの上の目覚まし時計を確認するとその隣に眼鏡を置き布団の中へと行儀よく潜る。
枕元のリモコンで電灯を消し、暗くなった天井を見上げながら明日の予定を思い浮かべる。
ほんの少しの時間が経ち――身体が眠る準備を終えたと思うと、みゆきはまぶたを閉じて、おやすみなさいと小さく呟いた。
★ ★ ★
「……――なんだ。やっさいもっさいか」
起き抜けに柊家の四女であるつかさはそんな言葉を誰となく零した。
それは見ていた夢に由来があるのだろうが、しかし彼女がどんな夢を見ていたかは定かではない。
ちなみに”やっさいもっさい”とは千葉県木更津市に伝承されるやっさいもっさい踊りの事だと推測できるがそれは別にどうでもいい。
「あー、ノートがよだれでぐちゃぐちゃだよ~……」
大事な勉強時間を寝逃げした結果は、ノートの上に蓄積していた成果のリセットであった。
それだけでなく、ほっぺには寝あざ、前髪には寝ぐせ、喉はカラカラだし、してたはずの勉強のことは頭の中に残ってない。
何もかもがぐちゃぐちゃだよと溜息を吐き、つかさはリボンののった頭を振って椅子から立ち上がった。
とりあえずは何か飲もうと――
「あ、流れ星ー」
――流れ星を窓の外に見つけ、彼女はこう願った。
”――明日、学校が休みになるといいな”
★ ★ ★
開けた青空の下で白刃が閃き、鉄よりも堅い鱗に覆われた翼竜の身体に十重二十重と傷が刻み込まれてゆく。
しかし一人の剣士がつけた幾重もの傷は巨体を持つ翼竜にとっては然したるものでもないらしく、全く揺るぐ様子はない。
翻って幾時間も戦い続けていた剣士の顔には疲労の色が濃く、またその周りには彼の同胞と思しき戦士達の亡骸が散らばっていた。
「あー、もう! ななこ先生がいきなり落ちちゃうから戦線がガタガタだよ~~!」
幾多もの勇者がひしめく世界をディスプレイの外から覗き込みながら、重度のネトゲプレイヤーである泉こなたは叫んでいた。
磨き上げたスキルにより辛うじて自キャラである剣士だけは生き延びさせてはいるものの、それも最早風前の灯火である。
溜め込んできた回復薬も底を尽き、頼りにしていた魔法使いはログアウトしたままであった。
「なんでメッセも繋がんないんだよー! ぐわぁぁああ~、2週間かけてデスペナをリカバリしたばかりなのに~~~!」
こなたの操る剣士が剣を振る度に翼竜の上にダメージを表す数字が浮かび上がる。
しかしそれは翼竜の体力からしてみれば本当に微々たるもので、ただ無為な時間が経ち絶望が積みあがってゆくばかりだった。
そして――
「\(^o^)/」
4時間の死闘の果てに最悪の結果を残し、こなたはただ机の上に突っ伏していた。
頭の中は勝手にいなくなった魔法使い。すなわちリアルでの先生であり、ネット内の仲間であるななこ先生への怒りでぐるぐるしており、
もうこうなったら直接電話して文句をぶつけてやろうかと、そう思い立って頭を持ち上げた時、彼女はそこに流れ星を見た。
真っ暗なディスプレイに映り込んだ窓の外を流れる流れ星に、彼女は咄嗟にこう願った。
”――死んだのがなかったことになりますように!”
★ ★ ★
「こなたのやつ。また携帯の電源切ってるし……」
柊家の三女でありつかさの双子の姉でもある柊かがみは携帯電話を折りたたんで小さな溜息をついた。
友人のこなたが携帯電話の電源を落としていることは多く、珍しいことではないがそれでも面白くないことには変わりない。
別に約束をしていたわけでもないので彼女に対して怒る筋合いもなく、溜まった小さなストレスは別の方へと向けられる。
――ポキッ☆
かがみの口先で一本のチョコレート付プリッツがその犠牲者となった。
もう夜中と言っても差し支えない時間帯であり、こんな時間にお菓子を食べてしまうのは不摂生極まりないのだが、
しかしそうはわかっていてもイライラが募るとついつい手が伸びてしまう。
「……あぁ、なんか委員の仕事も最近多いし、なんか――――あ、流れ星」
気だるさから椅子の背に強く身体を預けた時、かがみの目の中に窓の外に流れる一つの星の姿が映った。
流れ星は彼女が願い事のことを思いつく間もなく消えてしまったが、星が姿を消した後の夜空を見たまま彼女はこんなことを思った。
”――なんか、どっかパァーっとしたところに行ってみたいわね”
★ ★ ★
『じゃあリハはこれで終了で。次は本番入りますんでスタンバイよろしくお願いしまーす』
★ ★ ★
「――あれ?」
大きな目をぱちくりとさせ、眠っていたはずのみゆきはどこかに感じる大きな違和感に目を覚ましていた。
それがどこから来るものかは解らない。
ただ、どこかに勘違いや食い違いがあるのではないかという漠然とした感覚だけが強く頭の中で膨らんでいた。
「どうして制服を着ているんでしょうか……?」
一つの違和感の正体に気付く。
横になった時はパジャマに着替えていたのに、何故かいつの間に学校のセーラー服を着ていた。
しかもまだ部屋の中は暗いままだ。朝起きて着替えてから二度寝したとも考えられない。そもそもそんなことはしないが。
「夢……なんでしょうか?」
その一言で片付けられるならば話は簡単だったが、しかしみゆきにはそれが正解とは思えなかった。
あまりにも実感がありすぎて現実としか思えない。尤も、そんな夢を見ているのだと言われればそれを否定しきれないが。
ともかくとして、彼女はサイドボードの上の眼鏡を取り目覚まし時計を確認する。
時計が指し示す時間は11時半を回った頃で、起きる予定の時間よりかは遥かに早い。
「…………ラジオ?」
身体を起こしたことで、机の上のラジオに電源が入っていることを示す緑色のランプが点っていることに彼女は気付いた。
耳を澄ませば僅かなホワイトノイズがそこより流れてきており、どうやらこの音が気になって起きたのではと思い当たる。
制服を着ていることについてはまだ謎のままだが、とりあえずラジオを切ろうと彼女はベッドから降りた。
暗いままの部屋を一歩二歩と進み、ラジオのスイッチに指を当てようとしたところで――
―― 一番最初の『放送』が始まった。
★ ★ ★
……――パーパー パパッラパッパ~ パ――ン♪
- らっきー☆ちゃんねる -
第 0 回放送
『おはらっきー☆
さぁ、ついに始まってしまいました。らっきー☆ちゃんねる! パロロワ進出でーす。やったー♪
放送を聞いてくれているはじめましての人、こんにちは☆
わたし、ナビゲータの小神あきらです!
そして――』
『あ、えーと……あきら様のアシスタントを勤めさせていただく白石みのるッス。どうもッス』
『さーて、いきなりの放送でびーっくりしてる方もおられると思いますが、これを聞いてる人はとってもラッキーなんですって☆
でもなんでだろう? ねぇ白石さん、どういうことなんですー?』
『あー、はい。
この放送はある基準により特別に選ばれた方の元にしか届かないと、なっています』
『その選ばれる条件って?』
『いや、それはまだ内緒……とのことです。ていうか、僕も聞かされていません』
『そーなんだー☆ じゃあ、じゃあ、それに選ばれた人ってどうラッキーなわけ?
やっぱりこのキュートでプリチーかつプリミティブなあきらの生声生放送が限定で聞けるってところー?』
『いえ……いや、それもあると思いますが、今これを聞いてもらっている方々にはバトルロワイアルに参加していただきます』
『バトルロワイアルって、つまりは乱闘ー?』
『ええ、概ねその認識でよろしいかと。
ともかくとして参加された方々によって勝負していただき、見事勝ち残った方に豪華な賞品をプレゼントしようとそういう企画になっております』
『わーい♪ それは、超ラッキー☆』
『はい☆ ということで、放送を聞いてくれたみんなも事情を飲み込んでくれたかなー?
まぁ、ほとんどの人は似たようなことをすでに聞いてると思うけど、つまりはそういうことってことでーす☆
でもでも今回がはじめてって人もいるので、白石さんからルールの説明をプリーズ♪』
『あー、はい。
まずは、この放送が終わった後、参加者に選ばれた方々には会場となる島へと不思議な力でご案内します。
そこでそれぞれスタート地点に配され……現地時間の午前0時よりゲームスタートと、そういう段取りになっています』
『ふむふむー。それはわかったけど、拒否権はないのー? ちょっと予定がーって人もいるんじゃないかなー?』
『残念ながら拒否権は存在しません』
『だってさー☆ ざーんねーんでーしたー♪ じゃあ、続けてバトルロワイアルのルールにいってみよー☆』
『バトルロワイアルっていうけどさ、どんなゲームをするのー?』
『はい。ずばり申し上げますと、殺し合いとなります』
『殺し合いって……冗談じゃなく? 本物の~? お友達と一緒に参加してる人もいるのに~……?』
『はい。本物の殺し合いです!』
『こっわーい☆
放送を聞いてるみなさん。昨日の友が今日の敵ですよー☆ 気をつけてねー♪』
『で、肝心のルールはー?』
『はい。実は殺し合いの中においてはルールは存在しません』
『もんどうむよーう☆
そだよねー。いざ殺し合いって時にルールとかないよねー♪ そんなお行儀よくできないよねー☆』
『ですが、参加者間にルールは存在しませんが……』
『しませんが……?』
『ゲームそのものを放棄するような行動に関しては罰則が存在します!』
『はわわー。何が何でも殺しあわないといけないんだー』
『じゃあ、次はそこらへんの説明をプリーズ☆ ていうか、白石くん制服の襟を開いてプリーズ☆』
『……は? 僕がですか……おわー! なんで、俺に首輪がついてるんッスかー!
これ聞いてないよ! 聞いてないよ? 何時の間にー? ていうか、あきら様知ってたんッスかー!?』
『はーい♪
じゃあ、ここは私が説明してあげるねー。
みなさんも、もうお気付きになったかと思いますが、首輪をしてもらってまーす』
『ちょ……ちょっ! この流れはヤバイっすって! いやいやいや……!』
『はい、なんで白石さんがこんなにビビっているのかと言いますと……なんと首輪には爆薬が詰まっていま~す☆
下手にいじると爆発するかもしれないので、あんまりさわらないでねー♪』
『あの、アレっすか? 例のアレなんですか? 時報はもういやだーって叫ぶんスかー!?』
『んで、さっき白石さんが言ったけどゲームを放棄しようとするとこれが爆発しまーす☆
でもでも安心してください♪
殺し合いしたくないなーって思うぐらいなら全然平気ですから☆
具体的にはどういった時に首輪は爆発するのかな? 白石さん?』
『……え? は? 俺っすか?
えーと、あれです。まずは会場から逃げ出そうとしたら爆発します。それと首輪を勝手に外そうとした時っすね』
『はい、そのとーり。
ちなみに、誰もがゲームしたくないってなって24時間連続で脱落者がでない場合も爆発しまーす☆
この場合は全員の首輪がってことだから、つまりは全滅のバッドエンド。
……およよー、そんなことにならないようにみなさんがんばってくださいねー♪』
『えとですね。更にはもう一つ、禁止エリアに入ると爆発するっていうのもありますが……』
『はい! それは禁止エリアが実際に出てくる次の放送で詳しく説明したいと思いまーす☆』
『さてー、じゃあその次の放送ってのも説明しちゃおうかー。白石さんどーぞ☆』
『えーはい。ゲームが始まってからですね6時間毎にこれと同じ様な放送を会場に流します』
『そのこころはー? みんなが寂しくないようにー?』
『あ、いえ……ゲームの進捗状況。
つまりはこれまでに誰々が脱落されましたよ。などという情報とですね先程出ました禁止エリアのお知らせをします』
『なーるほどー☆
ついでに、このあきらの可愛い声と励ましメッセージもきけて一石二鳥ってわけだねー♪』
『じゃあ、ルール説明はこれでおしまい? 後は好き勝手やってもらっていいのかな?』
『ああ、いえいえ。参加者のみなさんにお得なお知らせがいくつか残っております』
『ほほうー? それを聞いたら殺し合いのモチベもグングンあがるのかなー?』
『かもしれませんねー。
ではまず一つ目に、参加者の皆様へはバトルロワイアルを円滑に進めるための支給品が漏れなくプレゼントされます!』
『おおー☆ いたれりつくせりー♪』
『会場につきましたらお手元に黒いデイパックがございますのでご確認いただき、是非活用してください!』
『ふむー、中には何が入っているのかなー?』
『はい。まずは鞄からして特別製でして……なんと、どれだけ物を入れても重さが変わらない!』
『すっごーい☆ でも、あんまり詰め込みすぎるといざって時にすぐに取り出せないかもだから気をつけてね♪』
『そして、参加者方のお名前を記した名簿!』
『みんな、お友達が参加していないかこれで確認してね☆』
『さらには、会場となる島の地図! それと方位磁石! さらにさらに暗い所で便利な懐中電灯!』
『地図にはめぼしい施設も記されているから、待ち合わせとかに使ってね♪』
『でもってこちら側で時刻を合わさせていただきました腕時計に、メモ帳と筆記用具!』
『うわー、やっさしー☆』
『そして、お腹がすいた時のために成人男子三日分に相当する食糧と水も入っております!』
『くわー☆ なんという心遣い~♪』
『でもでも白石さんー。肝心のアレがないと殺し合いはできないと思うんですけどー?』
『ご安心ください。ちゃーんと武器や道具も合わせて入れられております。』
『ほうー? どんなどんなー?』
『それは開けてのお楽しみ! パック毎に異なるアイテムが最大3つまで封入されております!』
『わーい☆ レクリエーション要素もエンタメ要素もばっちりだね♪』
『はいはいー、では最後にあきらから優勝した方へのすっごいご褒美のお話をするねー☆』
『どんどんぱふぱふー!』
『優勝した人はー、なんとー…… なんでもお願いをいっこだけきいてあげまーす☆』
『なんでもって言うとアレっすか? アレとかコレとかもありっすか? 例えばメインレギュラー欲しいとか?』
『そんなのちょれー☆
らっきー☆ちゃんねるなめるなっつーの♪ ぶっちゃけ死んだ人を生き返らせるでもOKでーす☆』
『じゃあ……殺しちゃった友達を生き返らせてなんてのも?』
『オールオッケー☆ なんでもありです!
でもいっこはいっこだから願い事の文言には注意してね。
○○ちゃんを生き返らせてだとその子だけだけど。友達をって言ったら友達全員になったりするから』
『うわー。夢が膨らむ話ッスねー♪』
『あーっと、もうお別れの時間が来てしまいましたー。さみしいけれど今回の放送はここまでです。
この放送が終わるとすぐにゲームは始まるから次はお届けできるのは6時間後になりますねー。
あきらの声がまた聞きたい人はその6時間で死なないように、がんばってくださいね☆』
『がんばってくださーい。白石みのるもよろしくー』
『それじゃあ……』
『『 ばいにー☆ まったねー☆ 』』
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『……あの、ところで、コレ、爆発しないんッスか? てっきり、みせしめーかと』
『はぁ、バッカじゃないの!? 見えてないのに見せしめもへったくれもないじゃない!』
『そ、それもそうッスね……ハハハ』
『それよかさー、あんた参加者にならないの?
せっかく首輪つけてあげたんだし、ほら、あれ……そうそう、ジョーカーっていうやつ』
『め、め、め、めめめ、滅相もないっ! 俺とか無理ですって、殺し合いとか無理無理ですもん!』
『えー、プロデュサーはあんたに期待してたみたいだけどねー』
『聞いてないッスから!
いや、もうほんと身体はるのも限度ってものが、この前のロケん時も周りからすっごい白い目で…………』
★ ★ ★
「……これは、いったい?」
律儀にも一言一句聞き零さず放送を聞き終えたみゆきの頭には無数の疑問が渦巻いていた。
あまりにも常識外れで、放送で聞かされた事がとても本当とは思えない。
これはただの番組をタイミングよく聞いてしまっただけで、自分が勘違いしているだけなのではとも。
しかし、どうしても否定しきれない証拠も存在した。
「こんな首輪……何時の間に……」
壁にかけられた大きな姿見には困惑の表情を浮かべる自身と、その首に科せられた環がはっきりと映っていた。
それが決して見間違いや幻ではないことは、指先に伝わる冷たい金属の感触が証明している。
これが何らかの大仕掛けによるものだということは、少なくとも否定できない。
「……警察に!」
それに気付けば、彼女の行動は迅速だった。
机の上の充電器に挿しておいたはずの携帯電話がないと気付くと、徒に時間をかけようとはせず踵を返す。
一階にある家の電話を使おうと部屋の出口へと駆け、扉を開こうとして――
「開かないっ!? ――お母さんっ! お母さんっ!」
しかしノブは鍵が掛かっているわけでもないのに不可思議な力のせいか固まっていて捻ることはできなかった。
深夜だが母が起きているかもとみゆきは扉を拳で叩き大きな声をあげる。
だがそれも埒が明かないと悟り、今度は窓の方へと向かった。
「窓からならっ!」
例え飛び降りたとしても庭は柔らかい土の上に芝生である。
ならば、気をつければ大丈夫なはずとみゆきは窓にかかっていたカーテンを払った。
「――――っ!」
しかし、その窓の外に夜空はなかった。
何も存在せず、ただの漆黒。
気付けば、その漆黒は何時の間にかにみゆきを取り囲んでおり、じわりじわりと、少しずつ彼女を飲み込んでゆく。
漆黒に飲み込まれ、みゆきの意識はそこで途絶える。
彼女が次に気づくのはここではない場所。どの時空に存在するかも定かではない殺し合いのための場所だった――……
【らき☆ロワ 開始】
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