人類のロボットと宇宙害虫が戦っています、という感じの出だしのシナリオ。
ストーリーは割と王道。
特筆すべきは全身戦闘アニメ。バリバリ動いて格好良かった。
全身戦闘アニメを表示するかどうかを戦闘ごとに選べるのもプレイヤーに優しい。
裂包蟲も見所の一つ。かわいいんだもの。
全九話なので、早くて2,3時間で終わるから正月休みの暇なときにお勧めしとく。



【争鋼紀バズヴァンカー】
「突如宇宙から飛来した謎の怪生物「装鋼蟲」
 装鋼蟲の攻撃の前に人類の運命はまさに風前の灯であった。
 だが、そんな装鋼蟲の前に一人の男が立ち上がる。
 謎に包まれたその男、名前はシャグマ!
 バズーカとパイルバンカーひっさげた
 愛機で仇のバズヴァンカーと供に
 シャグマの戦いが今始まる…」

マップチップに定評のある「ばけもののくに」が送り出す、
スパロボ風戦闘アニメにパワーを注いだ雰囲気の作品。公開順としては、
三作ある中の一番最新に位置している。男の浪漫溢れる武器と、
同作者がはじめて作ったシナリオの「戦場の花束」がドツボ直球を
貫いた「アタリ」だったことから、期待を寄せてレッツプレイ。

  • はじめの方
Readmeにあたるファイルに、プレイ感覚に影響を与えるかも
しれないオプションを表記してあるのは好感が持てる。png画像を
使っているということで、それらを使えるようにしてねと
書いてあったりする点も、よき配慮(と俺は思う)。

欲を言えば「敵ユニットスペシャルパワー使用」「2回行動能力使用」
も表記して良かったかな、とは思う。まぁ「距離修正」と
「サポートアタックダメージ低下」という、一目では見分け
にくそうなものに比べたら優先順位は低めなので…

  • 要注意な点
戦闘アニメの切り替えをする気満々な場合は、Data内の
「コピーの扱い」にも目を通しておくべき。起こり得る、エラーへの
対処法みたいなのが書いてあるので…
自分にスキルがあれば、このエラーを根本から消せる案を
探せたかもしれないと思うと、ちょっと悔しいものはある。
同時に、このテキストの中身は「最初にお読みください」に
入れても問題なかったんじゃないか? と思ったり。

  • グラフィック&演出
本作における自作グラフィック成分は、ユニット全て+スパロボ風
戦闘アニメ用グラフィック全て(但し、爆発エフェクトは覗く)+一部の
パイロットアイコン、そしてマップチップや背景画像が該当する。

戦闘アニメに関してはひとつの特色として、別の項で触れることに。

まず、パイロットだが今回は「無機が完全自作、生身が汎用素材」
である戦場の花束、「多分ヒトも人外も全自作」の果て無き塔+と
と並べると、戦場の花束とほぼ同様の形式をとっている。
もっとも、今回は巨大モノなので有機成分のほうが圧倒的に多い。

当初のうちは超荒廃世界で戦うために、どこかクセっぽさがある
キャラクター達が繰り広げる活劇みたいなものを想像してたり
しただけに、成上権太郎氏が描いたなんつーか…イラストめ?
そんなパイロットアイコンに戸惑った時期もあった。ただ、
引用元が統一されているお陰で、いきなり別世界なタッチの人が
出てきたよ~ということは感じさせない。ちょっと言葉探しに
苦労したが「劇的にイイ!とまではいかないが、ひどすぎでもない」
そんな感じである。例えるならアレか、素焼きのステーキか?

ユニットアイコンのほうは全自作。作品を作ったりブログで
ユニットアイコンを作っているうちに画風の変化もあるみたいで、
一部を除き黒で枠を塗らず、全体が淡い雰囲気の塗り方をされた
アイコンで統一されている。ただ淡い感じだけでなく、ユニットの
設定が滲み出た感じもさせられる。その心は「外見はメタリック、
だが中身は生々しい」といった感じだ。
いや、ホント見てるとそんな感じ。作品の主要ユニットのことを
考えれば、このタッチのアイコンは正解と言えるだろう。

演出とマップに関してだが、そこそこ使い方は心得ている感じが
伺える。7話やOPの背景になる地球の画像とか、それ以降の
戦いの舞台となる小天体内部とかは描き下ろしパワーが伝わってくる。
ただ、演出に関して更に向上の余地があるとしたら「音」の使い方
だろうか。飛び降りたりとか、足音や物音がキーになってそうな
イベントは、効果音を入れることで更に印象付けれただろう。
…割と多かったりしたように、思えたり。

ちなみに、ダウンロードページにはタイトルロゴが出てたりするが
タイトルコールの背景でしか出てこなくて、ちょっと残念だった。
あれでOPとか飾ってくれたらきっと布団の上を2回転しただろう。
そんな俺は甲滑蟲派である。つるつる装甲カワユス。

  • 戦闘アニメ
本作がただの短編では終われないところの要素を担う場所のひとつ。
SRCの公式から落とせる拡大戦闘アニメサンプルに比べると、
背景がスクロールしたり、敵が爆死したり、ちょいとテンポがスロー
気味なあたり、全体的にはサンプル以上にスパロボ寄りな雰囲気だ。
F+αでキャラが姿勢を変えたりする要素やカットイン込み、と
言えばわかるだろうか? 実にスパロボ風戦闘アニメ、である。

テンポがスローと言っても、簡易版にしたり、表示をするか
しないかを自在に選択できたり、読み込み時間を大幅に増やすような
負担にはなっていなかったり、うまく右クリックして早送りすると、
スピーディーな戦闘アニメを見ているかのような気分で鑑賞できたり
するので、なかなか捨てたものではない。
特にミサイルの類を早送りすると気持ちよかった。

特に、各種の必殺攻撃における力の入れ具合が素晴らしい。
(個人的には、ここから更に伸ばせる可能性をも見出せると思う)
はじめは通常武装を使っていて微妙な気分でも、必殺の武装を
使えるようになってくると、気がついたらソレ見たさにアニメを
まるまる鑑賞していた自分がいたものだ。
逆を言えば通常武装、特に炸裂感が抑え目に見えたのが好みに
ちと引っかかったところだろうか。爆属性の「火炎弾」で爆発が
なかったりとか。

ちなみに、バズヴァンカーは実体パイルバンカーで戦うかと思いきや
ENをゼロ距離で射出する感じの「フォトンパイルバンカー」が
主力で「あら?」と思ったことがある。最終的に脳内補完に手を
出してみて慣れたが。

  • キャラクター
全体的に、情報面は控えめで淡白に描写されている感のある面子。
彼ら自身は生い立ちとかより、態度と現在分かっていることへの
受け取り方を中心としたやりとりを展開していく。

淡白だが重点を置いている的な感はあり、全てのキャラの情報に
まで気を配らなくても、シャグマとシラザサ兄妹、そして蟲たちの
中で知能を有する者達を追っていくと大体把握できるかと。

少々インパクトは弱かったが、別に明らかにダメだなーという
キャラが出てきたわけではなかったので、普通の評価ということで
ひとつ。寧ろ、このテの人たちは共闘シナリオに放り込んで
いろいろ動かしてみたり潤滑油的な役割を持たせたりしても、
面白くなれる可能性を秘めているのでは? と考えさせる。
大まかな骨子は遊んでてつかめそうだったのだから。

  • シナリオ
キャラのところにも書いたが、情報に関してはキャラの動きを
目で追っていくうちに、必要な分が着々と蓄積されていく代物。
全体の雰囲気は、バズーカやパイルバンカーといった男の武器、
隠れて登場し圧倒的な強さを短期的に見せてくれる巨大合体ロボ、
90年代スーパー系の雰囲気を根底に持ってそうな蟲たちなどが
いるけれど、薄味。ただ、骨子はしっかりとした王道の流れで
進んでいくので、後半になると盛り上げどころを見つけられて、
気がついたらイイゾヤッチマエーな思考になってたのが俺だが。

余剰の多さは感じさせず、情報の不足は感じさせず、
良くも悪くも普通に受け入れられたので、あとはここに
音楽変更や効果音挿入で、聴覚的な意味での演出を残せれば
更に評価を上げれたかもしれないというのが俺の本音である。

ここもやはり、共闘に放り込むタネとしては上質なのかもしれない…

  • 戦闘バランス
主役機であるバズヴァンカーは、まさに戦いの中心的な強さを
発揮できるユニット。ただ、空戦や海戦など不得意みたいなものも
あって、それを正規の軍から参戦するユニット達がうまく補う形に
なっていたりする。短編で味方も少数…だからこそ、戦況の大きな
変化か、用法が大きく変化するような味付けは欠かせないだろう。

ただ、ボスやその護衛たちが固定モードなことが多くその穴を
突くことで時間さえ掛ければ安全に倒せたりするところも存在する。
積極的に攻めてプレイヤーを焦らせる要素をもうひと頑張り入れても
バチは当たらなかったんじゃないかな? 3話とか8話とか。

戦いに関しては援護と用法の理解さえできていれば、
詰むことはまずないだろう。撤退する敵を倒す要素も控えめだし。

  • BGM選曲
効果音や演出と絡めるとちょっと微妙だったかな~と思ってしまう。
イベントによって劇的に音楽が変わったり、ボス戦であることを
告げるような場面は是非KeepBGMで音楽を保って欲しかった…と、
いうのが本音である。
具体的には第六話イベント後、ヴィクトリア戦(最終の戦闘曲が!)、
ラスボス戦(最終形態は音楽切り替えなし固定が盛り上がると思う)、
とりあえず戦闘がらみの場面だとこんなところだろうか。

OPに関しても無音より、劇中曲の中からひとつ(個人的には
cbeat.midかcosdive.midが流れてたら静かながら燃えれたと思う)
選んで流すだけでも、存在感のアップにはつながれたと思うのだ。

効果音や画像よりもBGMってのは、イメージ能力や脳内補完だけで
カバーをするには難しい分野ではないかと考えるのだが、どうか?
またシナリオを書くということがあるのなら、
このあたり頑張ってくれると俺、嬉しいかも。

  • トータルバランス
薄味なワリにしっかり遊べたのは、全体の雰囲気とも置き換えれそうな
この分野で違和感のある変動とか、明らかに話のクオリティが他の
要素に比べて低いとか思わせることがなかったからであろうと思う。
作者が見せたいスパロボ風戦闘アニメも堪能させてもらって、格好いい!
というのも必殺技まわりでよく見つかったし、
実際プレイしはじめた後の第一印象の崩壊も、(まぁ個人的には)
感じることはなかったからだ(崩壊して面白さに繋がる作品というのも
見つけられていないだけで、まだ転がっている可能性はあるんだが)。

まぁ問題ない評価だけど、男の浪漫的要素を結構含んでいた割には
「ドン!」という音が似合う感じもしくは演出的強さが不足気味、
だったかもしれず。だがスパロボ風戦闘アニメの味は伝わった。
…たまに味わうのなら、これもイケそう。

  • 総評
劇的にお勧め! とまではいかないけれど、劇的にアウト!
とまではいかない絶妙なラインの作品だと思う。この作品は…
たとえ話で悪いかもしれないが「塩のみで焼いてみたステーキ」
のような味わいを堪能させてもらった。その心は「このままでも美味だが
さらに味付けをして美味しく出来る余地がある」というところ。
基礎に関しては、割といい仕事できているんで、後は演出面や音づかい
への気配りを中心に肉付けて補強していけば、更にいい味わいに
なることが容易に想像できる…のが、遊び終えた後の第一印象である。

「遊びすぎた」戦闘アニメってなんだろう? と気になったり、
たまには完結作を遊んで何かインスピレーション強められないかなー…
という方は一度触れてみる価値はあるのではないのだろうか。

それにしても遊んだ記憶を思い出せば思い出すほど、補完による
膨らませがいを感じさせれるように思える。
一生さんがこの作品の感想において残した登録希望の気持ち、
何だかわかるんだよな。骨子がしっかりしているだけに、共闘物における
ANOTHERを楽しむという要素の起点としては申し分なさげなだけに。

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最終更新:2008年06月06日 22:29