政策 > 2008 > 12 > 皇帝暗殺(強制イベント)

#これにあわせて、http://www20.atwiki.jp/porepole3/pages/13.htmlの政策を提出します

協力していただいた方
  • 宰相府の皆様
  • ISSの皆様
  • 越前藩国様(情報戦およびオペレート)
  • 土場藩国様(気象操作装置)
  • ISSを通して来て頂いた、有志の皆様(http://p.ag.etr.ac/cwtg.jp/bbs2/23578

対策

 白亜宮の完成が先送りにされ、落成にあわせた披露宴日取りを少し遅らせてスケジュールを組んだのは、理由がある。
 ペルセウス・絢爛・レムーリアの三正面作戦を前に、しかもその前に結婚式という要人が集まる場があるのだ。誰かが何かをするにはもってこい。そう、考えた。

 想定したのは、爆殺・毒殺・狙撃、そして直接攻撃である。対する星鋼京のアプローチはこうであった。
  仮に賊が現れるなら、手段を直接攻撃に限定させる。かつ、同時刻で別の場所で問題を起こすような、陽動の可能性を減らす。

 まず取り掛かったのは、白亜宮製作の出入り業者のチェックである。何か妙なものを持ち込んではいないか、壁に爆弾でも埋め込もうとしてないか、照明に照らされた模様が何かの魔方陣になっていないか…。
 白亜宮には、奇眼の血も取り入れるという事で、最小限ながら魔術的要素が組み込まれている。このバランスを破壊され、遠隔的に害を与えられる事は避けねばならなかった。
 空港、駅、港などの交通網の要所と、藩国内の街灯周辺もチェック。街灯を利用したテロ行為はまだ記憶に残っており、それらが再利用される事も懸念された。同時に国内の橋を含む主要建造物の増築・改築に関してもチェックが入れられた。これは白亜宮と同じ理由でもあり、陽動テロの危険をつぶす面を持った。

 また、トレーサビリティ関連のみならず、その他の荷物の出入りも幅広くチェックを行われ、兵器・核・その他危険物の持込を禁止した。後にこれらの荷物チェックは、公共事業として正式に発注・継続される事になる。
 合法的なものかつ危険物については、在庫管理の徹底を義務とするに留まっている。当然、警備期間中の一定距離内への持ち込みも禁止された。

 毒殺については、披露宴のスタッフに身元の確かなものを配置し、作業前の本人チェックと食材・飲み物の検分を行う事で対処した。これらの手間の侘びとして、少し彼らの賃金を足している。
 給仕などはバトルメードの職を持つものから選抜し、何かあったときの護衛を兼ねる。これは同時に暗殺者足りえるので、身元の確認もしっかりと行われた。

 爆殺に関しては、解体に人員をとられる危険性を考え、液体窒素を用意した。
 過冷却によって、タイマーなどの部分ごと物理的に爆発しない状態にし、安全な場所まで運ぶ作戦である。噂に聞いた生物兵器を取り付けた爆弾に関しても、同じ対処をする予定であった。こちらは過冷却でケースが破損して中のものが流出するのを防ぐため、特殊な袋をかけて凍結する手順になっていた。
 ちなみに何度かのテストの結果、幾人かの凍傷の労災認定と共に実用性が確認された。

 これらは摂政・御鷹の元、臨時に雇用された10000人の設定国民(これも就業率に計上されている)の中から魔法使い系及び世界解析が使用可能な風の中心を探すものアイドレスを持つものが魔法の知識を担当し、整備士を中心としたものが科学技術分野を担当、三重のクロスチェックのもと一月かけて終了させた。勿論、初めの方にチェックしたものに細工されても困るので、あとからランダムに選出した箇所をチェックする事も忘れない。これらは一部当日の阿弥陀で決められ、情報漏れ対策に当てられたといわれているが、事実は不明である。
#月3000*一万人*一ヶ月=3000万

 当日及び要人の移動が集中する日は、各移動ルート上の建造物に人員を配置。狙撃ポイントをつぶしにかかる。

 加えて、表向きは披露宴の警護としてISSへの打診を行った。当然、事前に案を提出し、向こうの検分を受ける手はずである。
 皇帝軍にも話を通した。信用されていないのは承知の上であるが、連絡不足による穴を突かれるのは避けたかった。
 期間中は医師も詰めてくれる事になっていた。これに併せた訳ではないが、星鋼京の警察・病院・消防署をISSに管理して貰う事も打診している。消防署は陽動によって災害が発生した場合の備えである。問題発生時には街灯の停止も指示している。

 裏では人員を星鋼京の兵器庫にも回した。宰相府から運ばれてくる絢爛向けの兵器に手を出される事は避けたかった。

 酷い話を言えば、要人が何人死のうが(星鋼京としてみれば激烈に困るが)大勢に問題が出そうには無かった。
 だが皇帝は別である。その後の混乱は計り知れず、亡くなってしまえば星鋼京と帝室との関係も困った事になりかねない、何よりまあ、新婦の縁者を死なせる訳には行かない。


 語弊のある言い方をすれば、ここまでやっても本命には意味がないだろうと思っていた。
 そう、短剣を操る白いサマーセーターの男である。奴は絶技で飛んでくる。そして皇帝が射撃無効なのを知っている。そして近場の人間と入れ替わる…
 不安は尽きなかった。

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基本構想

ICG 白亜宮落成式の警備方法を記述する

f:警備の大前提 = {
  1:ペルセウス・絢爛・レムーリアの三方面の作戦を前に控えた時期である
  2:結婚式という要人が集まる場であり、さらには皇帝も参列する
  3:白いサマーセーターの男の目撃情報が出た。これは例の男の影を示唆する証拠である
  1・2・3から、何らかの妨害が起こる可能性が高く、警備に尽力する必要がある

f:警備の事前準備 = {
  ISSに当日警備の依頼を出し、藩国内人員も可能な限り協力する
  宰相府にも警護の協力依頼を出し、公式の招待状も手配する
  皇帝軍にも話を通し、非常事態には出動要請を行い、また皇帝の星鋼京外への出立時の警備に穴が出ないよう、警備方法と手順について相互確認しておく
  よりVIPに近い場所の警備に当たる人員を身元、経歴などで選別し、魔法その他による異常状態になっているものがいないかチェックする
  TLOに関する、あるいは世界の問題にかかわる能力を持つ人には、それを封印してもらう(治癒師の特殊など)

f:警備の事前準備2 = {
  EV127事前偵察で使用した天候操作装置を土場から借りて蒼龍に配備、雲を利用した魔方陣などに対策しておく
  越前藩国の協力の下、ISSに出向中の犬士の方たちによる、情報処理サポートを受ける
  外交的に問題がある行動を取るとき、宰相府かISSを間に通して問題を解消・緩和できないか先方と協議し、手があればその解決案を採択する

  #土場はあさぎさんに、越前は黒埼さんに話を通しています

  参列者の中でNWに好意的なACEには予め話を通し、有事のための協力を要請しておく(危険時のパニックの沈静化・覚悟を決めておいてくれなど)
  #星鋼の生活ゲームに以前同席したしらいしさんに、「何かあるかも知れません」と相談しました。当人が参列するかは判りません

f:対アンデッド基本作戦 = {
  呼吸器系まで換装したフルボーグなどを除き、呼吸をしていないあらゆる人間を治安計画に組み込まず、かつチェックする。病院の霊安室などの常識的な場所に居る存在も、念のためチェックする(夫の故郷に埋葬したいのです、などといって、死体として入国されても困るので)
  ゾンビに対しては投網などで動きを封じる作戦に出る。銃を構えたり、腕をちぎって投げてくるような相手で無い限りは、動きを止めて遠距離から攻撃すればどうにかなる。屋台の焼きそば屋のプロパンガスのボンベを投げつけてふっ飛ばしてもいい
  スケルトンには放水を活用する。骨の比重は水より軽いため、消火用の放水ホースなどで転倒させれば一時的に無力化できる。この方法なら周囲の民間人への被害も少ない。流れ水(?)で風邪を引いたら見舞金を出す。転倒させて有利な修正を稼いでから処理する。可能ならば腰骨・背骨を優先して破壊し、人体として直立できない状態にするのを狙うと良い

f:宰相府への兵站システム使用要請 = {
  <f:警備の簡単な序列>で一位に書いてある御鷹は、PPGに名義がある。これを元に、可能であるならば本警備で発生する燃料消費に宰相府の海軍兵站システムを適用させてもらう
  兵站システムが適用されれば燃料消費は楽になり、予算と言う縛りが一部緩和されるので、より景気良く行動できる(その分治安維持能力が上がる)。

f:警備の簡単な序列 = {
  一位:御鷹摂政 
  二位:ISS(ISS内の序列は向こうにお任せする)  
  三位:星鋼京の人員(ポレポレ・キブルゥ他)
  四位:警官・消防隊員

  なお、なお、御鷹摂政は基本的にISSの要請に同意する

f:ISSに知恵を借りる = ISSはNWの治安を守っている実績がある。その知恵を借り、より効率的に警備シフトを作成できる。

f:建造物のチェック = {
  主な建造物は、建築途中から可能な範囲でチェックしておく。困難な場合は、ISSと相談して適宜省略する。

  f:建造物のチェック内容の例 = {
    1:出入り業者のチェック(何か妙なもの・素材を持ち込んではいないか、など)
    2:建築中のチェック(壁に爆弾でも埋め込もうとされてないか、など)
    3:構造のチェック(照明に照らされた模様が何かの魔方陣になっていないか、など)
    4:不振物のチェック(何か仕掛けが施されていないか)
  }
  f:建造物のチェック対象 = {
    白亜宮{白亜宮は、奇眼の血も取り入れるという事で、最小限ながら魔術的要素が組み込まれている。このバランスを破壊され、遠隔的にTLO化を含む害を与えられる事は避けねばならなかった}
    空港、駅、港などの交通の要所
    街灯などの照明設備{街灯を利用したテロ行為はまだ記憶に残っており、同じ手口も懸念された}
    増築・改築された国内のそれなりに大きな建造物
    河川に掛かる大型の橋(爆破などで移動を制限されると困るので)
    上下水道施設(毒物混入騒ぎを避ける)
  }

f:国内外の荷物の出入りチェック = {
  商業港・空港・鉄道で荷物の持ち込み検査を開始する。
    兵器
    核
    その他危険物(帝国法に準じる)
  以上の、藩国の許可を伴わない藩国外からの持込を禁止する

  合法的かつ危険物については、現存するものは管理者による在庫管理の徹底・情報提出を義務とする。披露宴期間中の一定距離内への持ち込みも禁止。やむをえないと判断された場合には、管理者の名義確認・用途・容量のチェックを行い、その上で監視つきで通す

  追記:後に、公共事業として星鋼京内で継続される。

f:殺害方法に対する対策 = {
  毒殺対策{
    披露宴のスタッフに身元の確かなものを配置し、作業前の本人チェックと搬入資材・食材・飲み物の検分を行う事で対処する
    給仕などはバトルメードに連なる職を持つものから選抜し、何かあったときの対処人員(医師の手配・応急処置など)を兼ねる
    手間の侘びも兼ねて、少しスタッフの賃金を足す

  }
  爆殺対策{
    毒殺対策の資材チェックと一緒に、危険物の持込をチェック,
    爆弾を発見した場合、液体窒素(アイドレス工場などの工業筋から調達する)で冷却し、安全な場所での爆発処理を試みる,
    生物兵器を併設するタイプの場合は、入れてある容器が破損しないように耐圧容器でくるみ、冷却する。なお、作業中の凍傷には、労災を認める
  }
  f:狙撃対策 = {
    当日及び要人の移動が集中する日は、各移動ルート上の建造物に人員を配置。狙撃ポイントをつぶしにかかる。
  }
  呪術・魔法対策 = {
    (いれば)神殿の僧侶や、知識のある魔法使い系の人員に巡回をお願いし、それらに関係するようなものが無いかをチェックして回り、ある場合は解除を試みる。手に負えない場合は宰相府その他の魔法エキスパートに連絡し、情報を請う。連絡回線は越前藩協力のサポート部隊により保持する
  }

f:対策人員 = {
   <f:建造物のチェック>および<f:殺害方法に対する対策>は、摂政・御鷹の元(同調判定絶対成功の特殊により)、臨時に雇用された10000人の設定国民(これも就業率に計上されている)が、三重のクロスチェックのもと二月かけて終了させる,
  勿論、初めの方にチェックしたものに細工されても困るので、あとからランダムに選出した箇所をチェックする事も忘れない。これらは一部当日の阿弥陀で決められ、情報漏れ対策に当てられたといわれているが、事実は不明である,
#月5000*一万人*一ヶ月=5000万

  整備士・舞踏子系アイドレス所持者が科学関連の視点から、魔法使い・精霊使い系アイドレス所持者が魔法関連の視点からチェックする

f:問題発生時の備えあれこれ = {
  星鋼京の警察・病院・消防署をISSに管理して貰う事を打診しておき、正常機能を取り戻させる(その為の雇用拡大を藩国経済の許す範囲で行う),
  大事になる場合は、星鋼京国軍非常事態時行動規則(http://www.awg-fsmd.jp/~machinpia/idress/etc/approach/02/02b.html)を適用する。非常事態宣言の発令は現地の藩王・摂政のどちらかが行う(判断は他の人でいい)。また、藩王や摂政が行動不能になる場合を考慮し、先の両者に連絡が取れない場合、現地での合議で決定するISS職員1名にこれの発動件を貸与する,
  現在の星鋼京の治安維持能力37(ショップ調べ)・災害救助能力20(消防署15+市民病院5)

f:祭事中の設定国民の避難について = EV124前に初心者騎士団から頂いた避難訓練のデータを元に、避難場所を設定・告知しておく。また、避難場所にトラップなどを仕掛けられていないかあらかじめチェックする。


f:対策本部 = 藩国の真ん中に位置する警察署を間借りする。オペレート行為が出来る犬妖精や舞踏子などのアイドレスを持つ人員を配置し、各方面との連携を取る。連絡回線は越前藩協力のサポート部隊により保持する

f:警護人員 = {
  シーズンオフで被害にあった3万人の補充と、さらに消防署の要員を含む3万の追加雇用を行い、これに当てる,
  ISSの管理下の施設に配置し、指示によって治安維持に当たる,
  当日は無線を配備し、各所の伝達の即時性を高める。また、定期連絡を密とし、以上があった場合にすぐ判る様にする

f:警護人員のその後 = 本人の希望を尊重するが、特に異議が無ければ各種公共施設の人員として雇用する

f:病院の機能回復 = {
  <f:警護人員>で雇用した方の中から、メード系などの応急手当の心得のある方や受付・事務処理能力のある方を病院に待機させ、贈られて来るであろう負傷者の対応に当てる。
  生物資源3万トンを国庫からだし、軽症者への医薬品(包帯・傷薬など)を生産して病院に配置する
  #BK警備保障がしまっていたため、青十時の常備薬が購入できませんでした。

f:星鋼京の兵器の貸し出し = 職務上で有用であれば、ピケ・ダックスなどの一部兵器を警備人員に貸し出す。無理な場合はISSへの寄付と言う形をとる。
f:医療スタッフの迅速移動 = 歩兵みなしを持つ医療可能なACEや、みなしにレーサーを持つ猫野和錆氏に、(断られなければ)ピケを貸与し、現場への移動に役立ててもらう

f:本命 = 例のサマーセーターが現れる事を想定し、皇帝の身辺警護には限られた人員のみつける。絶対成功などの能力を持つものが居れば、他の警備に抵触しない範囲で優先して配置する。

f:孤児たちの面倒 = 白亜宮の一部に場所を用意し、衣・食・住の確保をする,ポレポレの持つ資産からチョコレートを送る。 

IWG 以上
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SS1

一通りの白亜宮でのイベントがつつがなく終了し、皇帝は帰る事になった。
無論自家用ジェットであるが、空港に行く事に変わりは無い。



数名の護衛を引きつれ、空港のV.I.P席で珈琲を飲んでいた所だった。



『ソレ』が現れたのは。



白いサマーセーターに短剣を持っている。
無造作に振るった、短剣が、ヒュンと、風斬り音を立てた瞬間。



ぼとり、と何かが落ちる音がした。
ついで、噴出す生暖かい紅い液体。
飛んだのは首、噴出したのは血と悟る僅か0.2Sec。



空港は狂乱の渦へと巻き込まれた。






ギィィィンキィィンギィン!!!!

響く剣戟。
皇帝の剣と白いサマーセーターの男の短剣が交差する。
実力は恐らく白いサマーセーターの方が上か。
しかし、短剣と通常の剣。そのリーチの差と皇帝としてのプライドだろうか、が状況を膠着させていた。

そして

「っち、GT!!弾丸が底を尽きそうだ、お前の方は幾つ残ってる!?」

「こっちも余裕は無いですって!!御鷹さんは!?」

「すいません、もうこれが最後です」

職務で離れられないフシミに変わって、皇帝を見送りに来た、LC、GT、御鷹の三人もそれぞれ奮闘を続けていた。

白いサマーセーターの男が現れると同時、無数のゾンビが現れた。
空港の警備隊も当初こそ応戦していたものの、ゆっくりとその数を減らしていた。
そしてこの三人は何とか皇帝にゾンビを近づけまいと、壁を作っていたのである。

「くっそ、阿鼻叫喚の地獄絵図だな……!!」

ドズン、とゾンビの頭を撃ち抜いたLCが吐き捨てる。

「そろそろヤバイですね……これが最後です」

最後のマガジンを銃に詰めながらGTが告げる。

「今、ポレポレさんに支援を求めています、あと少し、何とか持ちこたえてください」

兼ねてより、デリンジャーしか持ち合わせていなかった御鷹は何とか外部との連絡を取ろうと躍起になっていた。
ちらり、と皇帝の方を見やる。
流石は皇帝、といった所か、あの白いサマーセーターの男、クーリンガンを前にして一歩も引いては居ない。
しかし――……勝つ事は無いだろう、とも思う。いや略それは確信だった。
恐らく皇帝は勝てまい。このままでは、恐らく皇帝は死ぬ。
御鷹の脳に最悪の絶望が写った瞬間……

 ガション

GTとLCの銃が仲良く弾切れした。
此処まで銃弾で何とか皇帝の所へゾンビを足止めするのと共に、自分達の命を保ってきたのだが……
その命綱が断たれた。

「………くッ」

終わり、だと思った――次の瞬間。

スパン――…… ドズム………!!

斬撃の音と、打撃音が響いた。
LCが手に持った二本のククリで、GTが警棒で、それぞれゾンビを纏めて数体見事に蹴散らしたのである。

「え?」

御鷹が感嘆を漏らす程に、見事な手際であった。

「いやいや、こんな所で使う事になるとは……」

「密かに特訓していた甲斐がありました」

トン、トンとリズムを取る二人。
未だ希望はある。ほっと安堵を取ると同時、再び御鷹は外部との接触を試みた。



数分後。

「無理が、あったな……」

「ありましたねぇ……流石にこの数相手にククリと警棒じゃ……」

三人は見事に追い詰められた居た。
これ以上下がれば皇帝とクーリンガンとの戦闘圏内だ。
それは即ち、自分達の死と、皇帝の死さえ意味していた。
散発的な銃声や悲鳴、怒声を聞く限り、未だ生存者は居るのだろうが、救援に駆けつけてくれるとも思えない。
ぎり、と御鷹は唇を噛む。外部との連絡は未だ取れない。

「……アレがあれば……もう少しは保つんだが……」

「確かに……此処はアレ、しかありませんね……」

LCとGTが同時にうなずきあう。

「な、何ですか!?それはッッ!!」

御鷹が食いつく。後少しで外部との連絡は着く。それまで持たせられればあるいは――……

「うむ、ツンデレだ」

「へ………?」

「ツンデレです」

「は………?」

大事な事なので二回言いましたッ面のGTとLC。

「いや、ええっと………」

言葉に詰まった御鷹だったが……

「べ、別に好きで言ってる訳じゃないんだから……勘違いしないでよね!!………頑張って……」


ヒュィン―――、ドズムドズムドズム。

周りを既に包囲していたゾンビが倒れ伏す。
此処に来て、神業じみた動きで、LCとGTは立ち上がる。

「っふ、作戦通り………ッッ!!」

「一国の摂政のツンデレ……俺はもう死んでも良いです、LCさんッ!!」

おお、と何かに感動しながら高速で敵を薙ぎ倒す二人。

「あ、貴方達はッッ!!」

御鷹が流石にぶちキレた瞬間、

『此方ポレポレ、どうした?』

外部との連絡が通じた。
嘘のような、本当の逆転劇は、今、此処より始まる。

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閑話


 一言で言うと、彼らはバカである。
 今までもそうであったし、きっとこれからもそうだろう。
 それが良い事か悪い事かは他人の判断に任せるとして。
 彼らは今でも、良き隣人である。

   /*/

 “通気ダクトのチェックもお願いします。自分たちが息してないからと言って、ガスでも巻かれるとやってられない”
 “貯水槽に毒でも入れられ、医者を移動させられたら…一応河川と貯水槽のチェックもお願いします”
 ポレポレが本部に詰めていたのは、なんでもない。単に本人がびっくりするぐらい弱かったのと、あとはまあ、第七世界人も仕事はするというポーズのためである。いや、一応各所との折衝とかもやっている。
 妄執と言えるまでのしつこさでチェックを要請するため、現場では煙たがられている。どうでもいいがこの男、仕事前に責任者全員の下を万屋の菓子折りつきで挨拶に回っている。

 彼の主な仕事は、本部詰め所での雑務である。 空港での襲撃と通信回線切断の報が入ったのは、その雑務をこなしていたある日の事。

「現地との通信復旧と、応援の手配を。ダックス部隊もお願いします。あと陽動の警戒も」

 ビビリはしたが、この程度でパニックになるほどでもない。想定してないはずも無い。
 ISSに派遣されていた越前のハッカー犬士が、即座に対応する。復旧した通信を通じて、各所の情報が伝わり始めた。

 「うちの流通のチェックの穴を利用して準備したかな。取り敢えず民間人の避難を最優先に。
  蒼龍も飛ばして下さい。上空から友軍の支援と航空写真の送信。高弟とか居なきゃ良いけど」

 「現場からの通信。御鷹摂政からです」
 「お願いします」

 『――俺はもう死んでも良いです、LCさんッ!!』
 『あ、貴方達はッッ!!』

     ?
       ?

 切羽詰ってる割には喜びの色が見える。

 「此方ポレポレ、どうした?」

   /*/


 ハッカー部隊が画面に空港内の地図を表示する。同時に現地までの信号を操作。ノンストップで急行する味方。情報戦マジスゲェ。

 「横の防火シャッターを下ろしてください。南側のはそれで止まるはずです。それと、今救援が向かっていますので、もう少しの辛抱です」

 通信を切って確認。他のポイントでの事件のチェック。

 「屋外では必要なら式典に並べたI=Dも送って下さい。なるべく白兵優先で、流れ弾を出さないように。要救護者の搬送と救出には消防署にお願いしましょう。病院がパンクするかもしれないので、軽傷者はメードさんによる治療を」
 「和錆さんにはピケで現地に行ってもらいましょう。レーサーみなしなら、たぶん」
 「空港からアンデッドが溢れたら…蒼龍に精密爆撃を要請。市街に入る前に足を止めてください。それと、防火シャッターで良いから向こうの移動ルートを制限して」

 矢継ぎ早に指示を出す俺カッコイイ、と言いたいが、単に打ち合わせ通りに指示を出しているだけである。
 そもそも直接攻撃以外の手段を妨害する方策をとってきたのだから、後は直接しかない。そして、直接攻撃さえ防げば、どうにかなる。

   /*/

SS2


響く剣戟の音は未だに続き。
この命は未だに鼓動を続ける。
それを、奇跡のようだ、と御鷹は思った。

背後では皇帝がクーリンガンと戦闘を。
前方ではLCとGTが無数のゾンビ相手に格闘戦を。
未だに続けている。

既に余裕は無く、皇帝も圧され、LCとGTは満身創痍だ。
そんな中、自分は祈る事しか出来ない。一刻も早く、救援が来るように、と。

キィィ―――ン、と言う一切甲高い音。
皇帝の剣が弾き飛ばされる。
無慈悲に、クーリンガンの短剣が皇帝の首を狙う。

「皇帝ッッ!!!」

御鷹のその声に応じてか、LCが咄嗟に一本のククリを投擲する。
投擲されたククリは円を描きながら、正確にクーリンガンの首を背後から狙う。
取るに足らぬ一撃だったろう。クーリンガンなら避けるにすら値しない。
しかし、皇帝の取った行動がクーリンガンの予測を覆す。
無慈悲に首を狙う短剣の切っ先を掠めるように、投擲されたククリに飛びつく。
一撃目を交わされたクーリンガンが返す刀で心臓を狙う。

ギィィィン――……

しかし、その一撃を皇帝は手に取ったククリで防いだ。

「中々の業物だ、使わせてもらう」

そうして、再びクーリンガンと皇帝は対峙する。


一方、ククリをかなり無理な体勢で投げたLCはその身をゾンビの群れに投げ出していた。
GTとの距離も遠い。
見えるゾンビをもう一本のククリで撫で斬りにし、何とか身を起こそうとするも、ゾンビの数は減らない。
両足を掴まれ、残る左腕で思いっきりゾンビの頭を打ち、それでも抵抗を続け――……

「―――ッッ!?」

眼の前にゾンビの顎。
咄嗟に庇おうとする腕も上がらず――……

パンッと、ゾンビの頭が破裂した。

「ISSだッ!!」

タタンタタタンタン!!!

軽い音と共にサブマシンガンが火を噴く。
一斉に雪崩れ込んでくる人影。
次々にゾンビを撃ち殺していく。

その間にLCとGT、御鷹は集まる。

「全員無事か」

「何とか……」

「私は……戦ってすら居ませんし……」

そうしてISSがゾンビと戦っている最中、御鷹の元へ一人の青年が駆け寄ってくる。

「警官隊、消防士、到着しました」

ビシっと敬礼する青年、やや緊張しているようだ。


「あ、……解りました。では警察官は民間人の保護を最優先に。
 消防士は二班に別れ、一斑はISSと共同でホースを使っての制圧、もう一斑は火災の起きた地域、あるいは起きた際に備えて下さい」

御鷹は即座に指示を飛ばす。
青年はサー、イエッサー、と返事をすると駆け出していった。
その後も御鷹は次々と指示を的確に飛ばしていく。
鎮圧用か窓を割ってダックスが突入し、ゾンビを踏み潰していく姿も見える。

「となると、ゾンビの方は任せて良いな」

「問題は此方、ですね」

LCとGTが皇帝とクーリンガンの戦闘を見やる。

「物量作戦、でも勝てはするんだろうが、な」

「嫌ですか」

「皇帝に貸しを作りたい、それに嫌がるだろう、そういうの」

「まぁ確かにいい気はしませんが……何か策が?」

口元を綻ばせる。

「今、猫野和錆って凄ェ医者が着てるらしい」

「………嫌な予感がします」

「大丈夫だ、死ななければ何とかしてくれる、それに皇帝に貸しは魅力的だ」

「あ”あ”あ”……やっぱりぃ……」

LCとGTはゆっくりと皇帝とクーリンガンの戦闘圏内へと入っていく。




皇帝とクーリンガンの戦闘は一進一退を極めていた。
推しては退く、退いては推す。
圧倒的な実力差を、埋めているものは……

ギィン……!!!

既に皇帝の手の中には自分の剣とLCのククリがあった。
異なる武器の二刀流。
相手のリーチに入ってはククリで捌き、退いては己の剣で攻撃。
皇帝が皇帝たるスキル/威厳だった。
しかし、それを以ってしてもクーリンガンを討つには一手、後一手足りない。

「ォォォォオオオオオオ!!!!!!」

其処に、咆哮を上げてGTが真横から走りこんでくる。
素手、しかし首と心臓を両手を交差させて護っている。
相手の武器は短剣、ならば自然と狙う箇所は限定される。
曰く、首、心臓、そして急所。
前のめりになった特攻状態では急所は極端に狙い辛い。ならば、首と心臓を護れば――……

ザク――、と。
クーリンガンが無造作に短剣をGTの腕に突き刺す。
そして、そのまま真横に振りぬく。
どれだけ力を込めた所で、所詮は凡人の足?き。取るに足らぬ。そう思った筈――……

伏せる獅子。
その名を冠したLCがGTとは逆の方向から走りこむ。

「―――ッッ!?」

しかも此方は同じ体勢で突っ込んでいるが、口にククリを咥えている。
咄嗟にGTの腕に突き刺さったナイフを手放し、逆の手で腰から短剣を引き抜き、LCの腕に突き刺す。
そのまま、地面に縫い付ける、その心算だった――しかし。

「―――………ッッッッ!!!!」

GTがその体をクーリンガンにぶつける。
僅かに揺れるクーリンガンの体。
其処に、咥えたククリの切っ先を、LCがクーリンガンの心臓目掛けて突き刺す――……

「――――ク」

それは誰の言葉だったか。
それぞれ片腕で弾き飛ばされるLCとGT。
万全を期した奇襲さえ一蹴。

「――――賦ッッ!!!!」

                    ・・
だが、この瞬間のみ、雑魚にクーリンガンは両手を使った。
一閃されるのは皇帝の剣。
そう、この場に置いて、最も何より警戒すべきは皇帝。

    斬ッッ!!!

袈裟に体を両断されるクーリンガン。
フリーになった皇帝は、その断罪の剣をクーリンガンに振り下ろした。

「――――……クッ」

血煙と共に倒れこむクーリンガン。白いサマーセーターが真っ赤に染まる。
決着は今、此処に。

「―――……ご苦労」

ピッと、血を払い、己の剣を鞘に収めながら、皇帝が口を開く。
LCもGTもそれぞれ結構な重症ではあるが、致命傷では無い。
GTは慌てて、LCはやや面倒そうに、皇帝の前に畏まる。

「中々良い、意気であった」

一瞬GTはこの場で首討ちもありうるな、と思っていたが、少し安堵した。
何しろ皇帝の一騎打ちの邪魔をしたのだ。

「そして、この短剣は面白い形をしている。中々興味深い」

ククリを始めて見るのか、LCのククリを撫でる。

「皇帝に使って頂ければ、これ以上の幸福はありません」

あんまりそうは思って成さそうな――どちらかと言うとそれ結構高いんですけど的なオーラを出しつつ――答えるLC。

「では記念に頂いて置こう」

えーと抗議の声を上げるかと思いきやLCは微笑んだ。
内心、貸し2ゲットォォォォォッッと叫んでるんだろうとGTは思ったが口にしなかった。

「では、医者に見て貰うと良い。その腕の傷は浅く無い。それに私が診る限り、肋骨も折れているぞ
 ――――ふ、それにしても、フシミは部下に恵まれているようで何よりだ」


皇帝は既にクーリンガンに興味を無くしたのか、悠然とその場を去っていく。
何処から来たのか、ISSの連中がそれを護衛しようとしてうっとうしがられてるのが見える。


「ふーやれやれ、ようやく一段落か」

「いや、LCさん、肋骨折れてるらしいですし、そもそも未だISSとかメッチャ戦ってますけど」

とっとっと、と軽い音と共に、御鷹がやって来る。

「二人とも無事でしたか――って、血塗れ!?」

一通りあたふとした後、来た時より5割増しで医者を呼びに行く、御鷹。

「俺等の仕事はこれで終わりさ、後は他の連中が頑張るだろ」

「良いンでスか、それで」

「ククリと弾丸代だって安くぁねぇんだぜ」

「いや、出してくれますよ、国が」

「まぁとりあえず、だ」

「はい」

「医者に診て貰おう」

「はい……」

血塗れの二人はばったりとその場に倒れ伏した。



次の日、新聞にはこう記事が飾られる事になる。


        『皇帝、クーリンガンを撃退』


其処に割と深く携わった、星鋼京の三人の記事は書かれていなかった。

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最終更新:2009年10月24日 19:10
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