木冬かがみが大学でぼっちになっているようです@ 大生板
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かがみはこなたと秋葉原を歩いていたようです。

(鬱展開・流血あり)



1.

かがみ「ぼっちはもう嫌だ。耐えられ無い!助けてこなた!!」
こなた「さびしんぼのかがみん、一人にしてごめんね。よしよし」
かがみ「こなたぁ、私・・・私、あんたのこと、・・・・」
こなた「かがみ・・・」

「はっ・・」

カーテンの隙間から差し込む朝日が、寝起きの目を刺す。
夢の中で微笑んでくれたこなたは、いない。
もう、いないんだ。

体を起こし、カーテンを開ける。
気持ち悪いくらい、いい天気だ。
今日は何もする気になれない。気分が悪い。
タバコに火をつけると、私は、あの6月の日のことを回想した。
高校を卒業後、仲良し4人組はバラバラの道へ進むことになった。
つかさは東海地方の短大へ、みゆきは四国の医大へ。
それでも、同じ都内の別の大学に進んだこなたとは、大学入学後の4月になってもちょくちょく会っては遊んでいた。
引っ張り回されてのアキバ散策ばかりだったけど、お互いまだ大学の友達もあまりいなかったこともあって、私たち二人だけは高校時代のロスタイムを楽しんでいたんだ。

5月の連休が終わる頃には、私もこなたもそれぞれの大学のサークルや授業が忙しくなってきて、少しずつ二人で遊ぶことも少なくなってきていた。
新しい環境に溶け込み始められたことはうれしかったけど、今まで大事にしていたものが少しずつ「過去」になってしまうようで、少し寂しかった。
多分、アイツも同じことを考えていたのかな、ある日の夕方、1週間ぶりに電話がかかってきた。

「かがみ、今度の週末、空いてる?映画でも見に行こうよっ!」
「私結構忙しいのよ?まあ、どうしてもって言うなら、日曜なら付き合ってあげるけどさ」なんて。
ホントは、誘ってくれたのがちょっぴりうれしかった。


2.

一生の友達。
そんな言葉で、はっきりと自分の思いを定義したことはなかったけど、アイツと私の関係は限りなくその言葉に近い何かだった。
素直になれないタチだから口には出せなかったけど、あの日曜日は本当に楽しみだった。

そして日曜日。
起きてすぐカーテンを開けたのを覚えてる。
天気はよかった。晴れてよかった。そのときは本気でそう思った。

「いや~面白かったね」
「アンタ、いくら笑えるシーンでも大声で笑いすぎよ!ちょっと恥ずかしかったじゃない・・」
「かがみだって、抱腹絶倒、腹筋崩壊してたじゃん(=ω=.)」
「してねえよ!いや結構笑ってたのは事実だけどさ・・」

池袋の映画館を出た私たちは、その後の予定も無かったので、習慣に流されるままに結局いつもの秋葉原に来てしまっていた。

「かがみ、とりあえずゲマズにでも行こっか」
「その前になんか食べようよ、お昼過ぎてるし」
「かがみんは相変わらず食いしんぼさんだなあ(=ω=.)」
「うるさいよ!っていうかアンタもおなか空いたでしょ?どこかいいお店ないかしら」

相変わらずのやりとり。こなたはマイペースで、いつも私をからかってばかり。
でも、それがアイツなりの愛情表現だって分かってたから、私も遠慮なくツッコミを入れる。こんな掛け合いの中に、確かな幸せがあった。

休日の秋葉原は、大通りが歩行者天国になっている。
ついこの間までは変なパフォーマンスをする人も沢山いて、逮捕者まで出たらしい。
警察のパトロールの成果か、今日は落ち着いた雰囲気だ。それでも、見るからにオタク風の青年から、若いカップル、外国人、ご老人夫婦やコスプレイヤーまで、あらゆる人種がこの道を歩いている。

ごくごく普通の、ありふれた休日。
私は歩き、隣にこなたがいて、からかい、ツッコみ、笑い合った。


3.




タイヤのスリップ音、鈍い衝撃音。悲鳴。

「ッ!!かがみ!危ない!!」

え?

気がついたら、私はしりもちをついていた。
両手で突かれた胸に軽い痛み。

トラック、こなた、血しぶき、血だまり。
何がなんだかわからない。
目の前の出来事が、夢か現実かも分からない。

こなたが、突然現れたトラックにはねられた。
宙を舞って、コンクリートの上を転がった。
血しぶきが、私にかかって、目に入った。

「こ、こなた・・・アンタ・・・・」
ここは歩行者天国、なんでトラックが・・いや、こなた、あんなぶつかりかた、血が、救急車、誰か、誰か・・・

足元がおぼつかない。
すぐそこで倒れているこなたに、転がるように駆け寄るまでのほんの数秒が、数時間にも思えた。
こなたは血を吐いて、腕や、胸や、頭や、顔から、たくさん血が流れ出ている。
膝が、あらぬ方向に曲がっている。

「こなた!しっかりして!」

こなたは、口をパクパクさせ、目の焦点が合っていない。手が、足が、ガタガタ震えている。
「すぐ救急車を呼ぶから、大丈夫よ、大丈夫だから!」
一目で分かる。「意識不明の重体」。
ニュースの中で聞き流していた単語そのものが目の前にあって、私の一番の親友がそうなってて。頭の中のいろんなものが結びつかない。
ポケットを探るが、携帯が見つからない。さっきの衝撃でどこかに落としたんだ。

「もしもし、あ、はい救急です。女の子が、いや沢山の人がトラックにはねられて・・・」
近くにいた青年が通報してくれている。どうやらはねられたのはこなただけではないようだ。


4.

遠くではまだ悲鳴が聞こえている。警官やパトカーが走り回っている。
サイレンが聞こえる。救急隊も到着したようだ、よかった、助かるよ、こなた。

「大丈夫か!?・・・・おい、そっちの男性を先に見ろ」

え?
「どうして・・・どうしてこなたを見てくれないのよ!あんなに血が出て、足も曲がって・・・」

でも、分かってしまった。こなたは、助からないんだ。

人がたくさん倒れていた。血がたくさん流れていた。
私はその後のことを覚えていない。





「・・・ふぅぅ」
吐き出した煙が宙を舞う。
煙越しに見た太陽の光はあの日と同じ、ぎらぎらと光っている。

机の上の古い新聞。
一面に、必死に涙をこらえ棺に別れを告げようとするみゆき、泣き崩れるつかさ、そして、つかさを胸に抱きながら、何の表情も見せていない私が写真に映っている。

「・・・7名の命を奪った今回の通り魔事件。犠牲者の一人であり、作家の泉そうじろうさんの長女泉こなたさん(19)の告別式がしめやかに行われた。
泉さんの高校時代のクラスメイトで親友だったという短大生(18)は、「(泉さんは)いつも明るくて、みんなを楽しい気持ちにさせてくれた。今はもう悲しくて・・・」と言葉を詰まらせた。 父そうじろうさんも、涙ながらにあいさつし・・・」

そう、こなたはもういない。私はあの日からひとりぼっち。
事件の目撃者で当事者、いろんな人にいろいろ聞かれた。
でも、何も応えなかった。
この記事のコメントも、記者は私のコメントが欲しかったようだけど、一言も口をきかなかった私の代わりに、つかさががんばってしゃべったんだ。


5.


事件の真相、犯人の生い立ち、動機、格差問題、精神鑑定、救急医療、ナイフの規制、歩行者天国の問題。

その全てに、私は興味が無い。

映画を見た後に行きたかったカフェが池袋サンシャインの近くにあって、でも当日になったら忘れてたんだ。
そういや、上野でマンガ展やってたっけ・・って、上野駅を過ぎてから思い出したんだ。
気になっていたラノベの発売日が過ぎてたから、お昼食べる前にゲマズに行ってもよかったし、新しいiPodが出たらしいからヨドバシのほうに行ってもよかった。
「かがみ、牛丼の香りに心惹かれてるね?」「女2人で吉野家かよっ」なんてやり取りもあったな。

アイツ流に言えば、フラグ。選択肢はいくつもあった。私が、こなたを殺した。
その日は天気がよくて、私は土曜日に用事があって、映画が終わったのがお昼前だった。

時計を見る。時刻は8時。今から霞ヶ関に向かえば、9時には着く。
精神鑑定の結果責任能力ありと判断され、起訴された被告の初公判の日だ。
あの男は、容疑者や、被告なんかじゃない。私は奴の無罪なんか推定しない。
私は忘れない。こなたを跳ね飛ばした瞬間、フロントガラスの向こうで笑みを浮かべた奴の顔を。

準備はすべて出来ている。私が学ぼうとしていた法律が下せない正義を実現するための。
親友を死なせた、一生消えない罪を負った私が唯一生きる気力を持てる目的。

こなたの遺影の裏に隠された、チタン製の短いナイフを確認する。
すべての気力を失い廃人となった父そうじろうの代役として遺影を持つ親友。
地裁の警備に強くマークされる可能性は皆無だ。

奴は間違いなく死刑になるだろう。しかし、それで私が救われることはない。
私の罪が許されることはない。私の手で・・・


黒い喪服に着替え、薄化粧をする。
化粧なんて、しばらくはできないかもね。そう思いながら、もう一度、鏡を見る。

鏡の中の私は、うっすらと微笑んでいた。

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