Fantasy Laboratory ~共有世界を創ろう!~

夕『雨に降られて』

2008.05.18 02:08

abendrot

 6月の、重たい空気が体にまとわりついた。
 もう、何日も青い空を見ていないと思う。
 出かける前に惰性でつけていたテレビニュースの天気予報が、リフレイン。「今日も、洗濯物は室内で」言われなくても、こんなシトシトな屋外に洗いたてのシャツを干すヤツなんているもんか。
 大体、昨日も同じようなこと言ってなかったか、あのお天気キャスター。て言うかさ、「お天気キャスター」の「天気」って、「天気予報」の「天気」じゃなくて「能天気」の方だよな。こんな鬱陶しいとしか言いようが無い屋外で、あんな爽やかな笑顔振りまくなんて、俺には到底できない芸当だ。
 まあ、今もし笑うなら……そうだな、たとえば、前を歩いてるサラリーマンの黒い傘に カタツムリ でも乗ってたら、笑顔になれるかもな。


 鬱陶しい雨模様の街中は、それでも人であふれていて、油断するとすぐにでも傘と傘が触れ合いそうだった。
 お気に入りの洋楽――バラードは外した。好きだけど、今日はせめてテンションだけでもあげて行こう――を供に、俺はその傘の花畑を手ぶらで歩く。いや、もちろん、俺の手にも一輪の傘。濃紺。カタツムリなし。
 袖の擦れ合いならぬ、傘の小競り合いを何度か繰り返し、人の流れに従い、また逆らい、そして、徐々に喧騒も傘の花も無くなる。


 今日の公園は、イヤフォンからの音漏れが気になってしまうほどに、静かだった。おそらく、都会のオアシスも、水分過多で人々に見放されたのだろう。
 あ、そうそう。音量下げなきゃ。
  快楽主義 と豪語するロックバンドが造った世界は、英語を理解する人間が聞いたら十中八九嫌悪するものであるらしい。
 まあ、英語の授業が睡眠学習でしかなかった俺にとっては、聞き心地さえ良ければ内容なんてどうでもいい――と言いたいところだが、最近は内容もちょっぴり気にしている。
 満員電車に乗り合わせた外国人に、「オマエモカ」的な目でウインクされれば、誰だってそう思うだろう。多分。


 人の疎らな公園の、さらに端の端。濡れて座ることすらできないベンチだけしかない、けれどそれなりに大きな広場。
 前に来たとき、ここは犬の社交界の場になっていた。ただし、服を着たぬいぐるみのような連中ではなく、「密着○○24時!」にほぼ皆勤賞を遂げている羊飼い犬、シェパードオンリーの社交界だった。あれは、かなり壮観だったと記憶している。まさか、警察犬がこんなにも流行っていたなんて。彼女は、そう言っていた。
 そんなお犬様広場も、今は、濃紺の花を携えたツマラナイガキの俺が一人きり。
 近くには、誰もいない。


 俺は、ポケットからケータイを取り出し、今朝の目覚まし時計になったメールを再度チェックする。
 送り主の性格を顕著に表したメールだ。

『subject:今日の待ち合わせ場所は・・・
 本文: パンドラ の匣には、どうして数々の禍と一緒に希望が入っていたのかな? 13時に「悪魔の パンドラ 」でその答えが分かるわ』

 なぜ、素直に待ち合わせ場所を書けない? 以前そう聞いたこともある。彼女はこう答えた。つまらないから。
 今日もまた、俺は奇妙な暗号を受け取ってから、たった2時間でここに来ている。
 お前、絶対に遊ばれてるぞ。雨に濡れた木々が、そう語りかけてくるようだ。
 雨も、相変わらずシトシトシトシト降り続いている。
 なのに、俺は、シェパード公園で人類に授けられた最後の禍である「希望」を胸に、彼女を待ち続けた。
 時刻は既に、13時半。





 あれ? 場所、間違えたかな。 

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いまいち、ファンタジックじゃないような^^;
ちなみに彼女の暗号ですが、「悪魔のパンドラ」→「サタンのパンドラ」→「土星の衛星『パンドラ』」→「土星、羊飼い衛星群『パンドラ』」→「羊飼い」→シェパード。まあ、単なるこじ付けで。


ミカヅキX
「羊飼い衛星群」は難しすぎる~。
で、実際まちがいだったんでしょうか?05/18 03:02

野良(--)
悪魔だとデーモンの方が近いような。05/18 20:12

水上 える
暗号むずかしっ( ̄∀ ̄05/19 04:11