ブラウン管の歪調整方法

 ※よく分からない場合は下記作業を行うと悪化させる可能性があります。また、ブラウン管と周辺回路には高電圧充電部があり危険ですので分かる人にやってもらいましょう。

 まず、(1)コンバージェンス(またはコンバーゼンス)調整を行い、それでも調整しきれない歪みを(2)強制的に磁石などのパッチ当てで補正します。

 (1)コンバージェンス調整には、静コンバージェンス(またはスタティックコンバージェンス、画面の中央部分のみの調整、電子ビームを走査していない時)と動コンバージェンス(ダイナミックコンバージェンス、電子ビームを走査させたときの補正)があります。

 静コンバージェンス調整にはブラウン管のネック部(細い管になっている部分)に付いている多極性磁石を回転させることにより行います。多くはうす紫色の磁性プラスチックでできています(車に貼る初心者マークの磁石と同じような材質)。なお、静コンバージェンス磁石とは別に、全く同じ形状でピュリティ磁石というのも近くにあるので、それと間違えないように注意が必要です。ピュリティ磁石は色純度の調整をします。

 電子ビームはブラウン管面を正面から見た場合、グリーン(Green)の電子ビームが中心から出ていて、その両脇からはそれぞれ赤(Red)のビーム、青(Blue)のビームが出ています。青のビームはこの3本のビームの常に中心となります。
 静コンバージェンス調整用磁石は4極のものと6極のものがあり(下記写真参照)、どちらもグリーンの電子ビームには影響を与えません。

ブラウン管ネック部 ピュリティ磁石 4極磁石 6極磁石
 4極のものはその赤、青のビームに対してそれぞれ逆方向に、かつ同じ量だけ移動させる効果があります。移動する方向は磁石の極性によってグリーンのビームに近づく方向と遠のく方向どちらかに動きます。どちらに動くかは4極磁石の極性がどの位置にどの極性があるかで影響しますがは見た目ではわかりませんので、回してみるなどしてどちらに動くか確認してみないと分かりません。この磁石の極性、電子ビーム、ビームの動く方向(力)はフレミングの左手の法則によります。
 6極の磁石は、赤、青のビームに対して同じ方向に同じ量だけ移動させる効果があります。
 イメージとしては、4極の磁石で赤緑青のビームを重ね、6極の磁石でビームの位置(ただしブラウン管中心部のみ)を調整する感じです。

 なお静コンバージェンスと動コンバージェンス、ピュリティ磁石の効果は互いに影響しあうので、どちらかを調整したら他方も調整が必要となります。

 動コンバージェンスは補正を自動化してあるものがあり、その場合は調整用ボリウムや内蔵のマイコンでデジタル補正値を変更して行います。

 なお、偏向コイル(変更ヨーク)の位置ズレでも歪みが発生することがあります。その場合は偏向コイルの固定バンドを緩めて正しい位置、角度に設定して固定した後、改めてピュリティ調整、静コンバージェンス調整、動コンバージェンス調整が必要になります。

 ブラウン管ネック部の偏向コイル(偏向ヨーク)調整については下記資料を参照。ただしトリニトロン管とアーケードゲーム用のブラウン管で多少異なることがあります。
   トリニトロンブラウン管テレビ KV-EF34M80のサービスマニュアル←リンク先に飛んでも表示されない場合は検索欄で「KV-EF34M80」と入れて検索してください。

 (2)歪み調整方法 磁石を使った強制補正方法

 参考資料
 ・カラーテレビ受信技術[増補版] 日本放送協会編 NHK出版
 ・トランジスタ・ICカラーテレビ修理マニュアル 吉野宏二 オーム社
 ・テレビジョン技術教科書(上) 日本放送協会編 日本放送出版協会
 ・テレビ技術教科書[上] 日本放送協会編 日本放送出版協会

最終更新:2011年05月13日 04:40